新築住宅に床暖房は必要?種類ごとのメリットや費用を考慮して検討しよう
注文住宅を新築するにあたって、床暖房は人気の高い設備の1つとなっています。足元から全身をじんわりと暖め、エアコンのように風が直接当たることはないので、家族全員が快適に過ごしやすいというのが主な理由です。この記事では、床暖房の種類や費用、設置時に注意したいポイントについてくわしく解説します。マイホームの暖房設備に迷っている方や、体への負担が少ない暖房をお探しの方は、ぜひ最後までご一読ください。
新築住宅における床暖房の必要性
新築住宅の断熱性と気密性が向上するにつれて、床暖房の需要は減少する傾向があります。高い断熱性と気密性を持つ建物では、室内の温度や湿度がより安定しやすくなるためです。しかし、床暖房は以下のような状況で依然として役立ちます。
乾燥対策を重視する
床暖房はエアコンよりも湿度を保ちやすいため、乾燥を気にする方に最適です。部屋の湿度を快適に維持するためには、温度を上げすぎない必要があります。エアコンは部屋を暖めても足元は冷える傾向が強く、つい室温を高めに設定しがちです。床暖房は足元から全身がまんべんなく暖かくなるため、室温を上げすぎずに湿度を保てます。
末端の冷えが気になる
床暖房は末端冷え性の方にとっても最適な暖房設備です。足元からの暖かさが、湯船やコタツに入っているときと同じ「頭寒足熱」の環境を作り出します。そのため、頭がのぼせることなく全身の血流を促進し、手足の冷えを軽減できる仕組みとなっています。また、高齢者にとっても負担が少なく、安心して使用できる暖房設備です。
快適な作業環境の実現
床暖房が生み出す「頭寒足熱」の環境は、勉強や仕事に集中するのに適しています。床暖房とエアコンの部屋で記憶力のテストを行ったところ、床暖房の部屋で受験した人たちのほうが点数は高かったという結果もあるほどです。足元が心地よい温かさでありながら頭はクリアな状態を保てると、作業に集中しやすく学習効果も向上します。
掃除の手間を軽減
床暖房は、敷物を必要とせず、カーペットやラグを敷かなくても快適に過ごせます。部屋に敷物がないと、ホコリやダニがたまりにくく、掃除が簡単です。また、床暖房はフローリングが基本なので、絨毯と比べて掃除の手間がかかりません。暖房器具を床に置かないため、お掃除ロボットを活用しやすい環境も整います。
床暖房の種類は電気式と温水式
新築住宅に床暖房を導入する際は、床暖房の種類を選ぶ必要があります。床暖房は大きく分けると、「電気式」と「温水式」の2種類です。
- 電気式:床下に設置された発熱線や面状の発熱体に電気を通じて暖める方式
- 温水式:床下に敷設された温水パイプに温水を循環させて暖める方式
それぞれの方式は熱源によって細分化されるため、次でくわしく解説します。
電気式床暖房の種類
電気式床暖房は、熱源の違いによって次のように分類されます。
電熱線式 | ・床下の電熱線に通電して床を温める方式 ・最も一般的なタイプの床暖房 |
蓄熱式 | ・床下に蓄熱材を配置・夜間に電力を使用して蓄熱材を加熱し、昼間に放熱する方式 ・夜間電力を利用するため、ランニングコストを抑えられる利点がある |
PTCヒーター式 | ・自己制御型のPTCヒーターを熱源とする方式 ・温度に応じて電力供給を制御し、過剰な温度上昇を防ぐ |
電気式床暖房のメリットとデメリット
新築住宅に電気式床暖房を導入するメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
・給湯設備が不要で、設置コストを抑えられる ・部分的な設置が可能 | ・ランニングコストは高い傾向がある ・温度ムラが発生する可能性がある |
電気式床暖房は部分的な設置が可能で、キッチンや書斎などの一部を暖めるのに適しています。給湯設備が不要なため、初期費用を抑えられるのも魅力的です。ただし、稼働中は電気代が発生するため、ランニングコストは高くなる傾向があります。温度にムラが生じやすい可能性もあるので、設置時には注意が必要です。
温水式床暖房の種類
温水式床暖房には、以下のような方式があります。
ガス式 | ・ガスボイラーで沸かしたお湯を利用する方式 ・立ち上がりが早く、効率的な暖房が可能 |
ヒートポンプ式 | ・大気の熱や電力で沸かしたお湯を利用する方式 ・エコでランニングコストが低い ・環境にやさしい暖房方式として注目されている |
灯油式 | ・灯油ボイラーで沸かしたお湯を利用する方式 ・ランニングコストが比較的安く、経済的な暖房方法の1つ |
温水式床暖房のメリットとデメリット
新築住宅に温水式床暖房を導入するメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
・ランニングコストが比較的安い ・床全体を均一に温められる ・広い面積で設置した場合、コストパフォーマンスが高い | ・初期費用は高い傾向がある ・部分的な設置が難しい ・寒冷地では不凍液の交換が必要な場合もある |
温水式床暖房は初期費用が高いものの、ランニングコストが比較的安いというのが特徴です。広い面積を均一に温められるため、複数の部屋でも1つの熱源で対応できる利便性もあります。ただし、部分的な設置が難しく、寒冷地では不凍液の交換が必要な場合もあるので注意が必要です。
新築住宅に床暖房設備を採り入れるメリット
マイホームを新築する際に、床暖房設備を採り入れるメリットはいくつかあります。リフォームでの取りつけも可能なものの、新築時ほどの自由度はありません。事前に優れた点を理解したうえで検討するのがおすすめです。
足元からじんわりと温められる
床暖房は、足元からじんわりと温かくなる特徴があります。暖かい空気は上にたまる性質を持つため、エアコンのような暖房器具では足元が冷たく感じられる場合もあります。床暖房では床に直接足を置けば暖かさを感じられるため、足元が冷える感覚はありません。さらに、のぼせのリスクも軽減されるため、健康面にも配慮できます。
安全性が高い
床暖房設備は火を使わないため、石油ストーブや電気ヒーターのように火災や火傷の危険性がありません。安全に使用できる暖房のため、小さなお子さんや高齢者のいるご家庭でも安心して使用できます。また、ペットがお留守番する際も部屋を暖めておけるので、共働き世帯にもおすすめです。
部屋の湿度を保ちやすい
床暖房はエアコンと比較して、空気を乾燥させずに部屋を暖められます。エアコンの暖房では風が出るため、肌や目が乾燥しやすいというのが課題です。床暖房は部屋の温度が上がっても湿度を保ちやすく、加湿器の使用頻度を控えられます。結露やカビ、ダニの発生を抑えられるので、アレルギー体質の方にも安心です。
掃除や収納の手間が省ける
床暖房はフローリングのまま使用する設計なので、カーペットやラグを敷かずに快適に過ごせます。ストーブや電気ヒーターのように床掃除の際に動かす必要もなく、手間が省けて簡単です。オフシーズンに向けて収納スペースも不要なので、家全体を片づけやすくしてくれます。
床暖房の設置費用
新築住宅に床暖房を取りつける費用は、広さや製品の種類によって大きく異なります。設置費用に関しては初期費用だけでなくランニングコストやメンテナンス費用の検討も重要です。それぞれの関係性について、費用別に紹介します。
初期費用
床暖房の設置は1畳あたり5万〜10万円かかるのが相場で、設置スペースによって必要な金額は異なります。たとえばリビングへの設置を考えると、金額の目安は以下の通りです。
6畳 | 30万〜60万円 |
8畳 | 40万〜80万円 |
10畳 | 50万〜100万円 |
12畳 | 60万〜120万円 |
15畳 | 75万〜150万円 |
同じ広さでも、電気式と温水式では設置費用には差が生じます。新築住宅のリビング(10畳)に、電気式床暖房と温水式床暖房を導入する場合の初期費用を比較してみましょう。
以下は、Panasonicの床暖房システム「フリーほっと」と「フリーほっと温すいW」の比較です。
床暖房は新築時の設置であれば、住宅ローンの対象となります。注文住宅を検討中の方は、建築費の一環として検討してみるのもおすすめです。
ランニングコスト
床暖房を導入した場合、毎月の光熱費も考慮する必要があります。床暖房のランニングコストの目安は次の通りです。
電気式床暖房(フリーほっと) | 約8,400円/月(床温約30℃の場合) |
温水式床暖房(フリーほっと温すいW) | 約4,500円/月(床温約30℃の場合) |
ランニングコストを抑えるためには、太陽光発電システムやエコキュートの導入が助けとなります。新築時には、省エネ設備も一緒に検討するのが賢明です。
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メンテナンス費用
床暖房の寿命は通常30〜50年とされており、短期間で床暖房全体を交換する必要に迫られる可能性は高くありません。しかし、以下のようなメンテナンス費用が発生するため、予算を確保しておく必要があります。
メンテナンス内容 | 頻度 | 費用 |
不凍液の交換 | 10年に1度 | 約5万円 |
熱源の交換 | 10~15年に1度 | 約20~40万円 |
故障時の修理代 | 不定期 | 約30万円以上 |
不凍液は温水循環式の床暖房に使用され、床を温める温水が凍結しないようにするために不可欠です。熱源は電気式と温水式の両方で用いられ、一般的には10〜15年程度持つとされています。床暖房の故障時には、壁や床を剥がして修理する場合もあるので要注意です。修理代は故障の内容や程度によって異なるものの、30万円以上の費用がかかる可能性も考えておきましょう。
メンテナンス費用や修理費用を節約したい場合は、注文住宅を建てる際に、アフターサービスや保証期間を設けているハウスメーカーや工務店に依頼する方法もあります。メーカーとは別にフォローしてもらえるケースもあるので、事前の確認がおすすめです。
新築住宅に床暖房を導入する際の注意点
房を導入する際には、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。ライフスタイルに適した床暖房を選ばないと、投資した費用に見合った満足感を得られない可能性があるためです。
初期費用やランニングコストが高い
床暖房は、他の暖房システムに比べて初期費用やランニングコストが高めという特徴があります。電気式の場合は製品自体の価格が高く、温水式では給湯器の設置が必要となるためです。そのため、初期費用の節約は難しいと考えておきましょう。
しかし、床暖房は壁や天井への熱の反射によって部屋をゆっくりと暖めるシステムです。高い断熱性を持つ住宅であれば、効率的に部屋を暖められます。新築住宅を建てる際には、断熱性を向上させたり、断熱ガラスを採用したりすれば光熱費削減につながります。
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部屋が暖まるまでに時間がかかる
床暖房は、高温を発生させるファンヒーターや蓄熱暖房機とは異なります。そのため、床暖房だけで部屋全体を暖めようとすると、かなりの時間がかかるというのが課題です。吹き抜けやリビング階段のある間取りの家では、より時間がかかります。
エアコンや全館空調も高温を発するわけではないものの、風を利用して部屋全体に暖かい空気を循環させる仕組みです。短時間で部屋を快適な温度にしたい場合は、床暖房に加えて別の暖房設備の併用をおすすめします。
床材の選択肢が限られる
床暖房は床そのものが発熱するため、材質によっては適さない場合があります。熱によって反り返ったり、継ぎ目に段差が生じたりする可能性があるためです。床材にこだわりがある場合は、ハウスメーカーや工務店の担当者に相談してみましょう。
注文住宅では、自然素材の無垢フローリングが人気となっています。自然な風合いと柔らかな手触りが魅力なものの、本物の木の一枚板は熱によって変形しやすい性質です。床暖房との相性が良くないため、家づくりが難航するケースもあります。
まとめ
床暖房を新築住宅に設置するメリットは、足元からじんわりと暖められる点や安全性、掃除のしやすさなどが挙げられます。しかし、他の暖房設備と比較して初期費用やランニングコストは高くなる傾向があるため、慎重な検討が必要です。電気式の場合は太陽光発電と組み合わせることで、温水式の場合はエコキュートを利用することで光熱費を大幅に削減できます。家づくりは総合的な視点が重要ですので、省エネ設備にくわしいハウスメーカーや工務店に相談してみましょう。