トリプルガラスのメリットとデメリットを徹底解説!注文住宅に最適な窓を選ぼう
光熱費の高騰や省エネ意識の高まりにより、注文住宅では「トリプルガラス」の窓を導入する人が増えています。この記事では人気の秘密を探るべく、トリプルガラスのメリットとデメリット、シングルガラスやペアガラスとの違いについて解説します。断熱性の高いマイホームを建てたい方や毎月の光熱費を削減したい方は、後悔しない家づくりにお役立てください。
トリプルガラスの特徴と普及の経緯
トリプルガラスは3枚のガラスで構成され、2つの隙間には空気やアルゴンガス、またはクリプトンガスが封入されています。複層ガラスの1種として、注文住宅の窓でも人気です。トリプルガラスが積極的に選ばれるようになったのは最近のことなので、普及の過程を簡単に紹介します。
シングルガラスからペアガラスへ移行
日本の住宅では単板ガラス(シングルガラス)が主流だったものの、ガラス1枚で屋外と室内を隔てているだけでは、熱の出入りが非常に大きいという課題がありました。一戸建て住宅には「夏は暑く、冬は寒い」というイメージがあるのは、シングルガラスによる断熱性の低さが原因かもしれません。冬には窓に結露が発生しやすいという問題もあり、住宅の断熱性を高める要望が次第に増えていきました。その結果、新築住宅では複層ガラスが徐々に使われるようになり、ペアガラスの普及が始まりました。
ペアガラスは2枚のガラスの間に、スペーサーと呼ばれる乾燥剤入りの金属部材を挟んで乾燥空気を封入している構造です。単板ガラスと比べて断熱性能や遮熱性能が向上し、結露予防にも役立ちます。トリプルガラスと同様にアルゴンガスやクリプトンガスのように熱伝導率の低いガスを封入したものや、真空にしたものなど製品の幅が広いというのが特徴です。
省エネ基準適合義務化と電気代高騰でトリプルガラスが普及
ペアガラスの普及によって住宅の断熱性は上がったものの、時代は地球温暖化を抑止するための動きに注力するようになります。日本でも政府がカーボンニュートラルの目標を掲げ、2025年4月より新築住宅には省エネ基準適合が義務化されることになりました。そのため、一戸建て住宅を建てる際は、窓にも断熱性の高さが求められるようになります。
また、電気代の高騰が続き、光熱費削減を目的に家の断熱性を見直す家庭も増加傾向です。トリプルガラスはペアガラスと比べて空気層が1つ多くなるため、より断熱性が高くなります。太陽熱を反射する金属膜がコーティングされたLow-Eガラスを使用した製品なども生産され、用途に合わせたガラスを選べるのもトリプルガラスが普及した要因の1つです。
(出典:国土交通省「省エネ基準適合義務化」)
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トリプルガラスとペアガラスの断熱性を比較
トリプルガラスはペアガラスと比べて、断熱性が約1.5倍高いとされています。たとえばLIXILのガラスを比較した場合、熱貫流率は以下の通りです。
ガラスの種類 | 熱貫流率 |
一般複層ガラス | 2.7W/m²・K |
Low-E複層ガラス | 1.1W/m²・K |
トリプルガラス | 0.55W/m²・K |
熱貫流率とは、室内と室外の温度差を1℃として、窓ガラス1㎡あたりに対して1時間にどれだけの熱が通過するかを示す数値です。熱貫流率が小さいほど熱を伝えにくく、断熱性能が高いガラスとなります。つまり、トリプルガラスを採用した窓ガラスが最も断熱性に優れているということです。
トリプルガラスを窓に導入する5つのメリット
トリプルガラスを窓ガラスに採用すると、住まいの快適性と省エネ性能を大幅に向上させられます。従来の窓ガラスと比較して、多くの魅力を持つトリプルガラスの主なメリットは次の5つです。
断熱性に優れている
トリプルガラスの最大のメリットは、断熱性の高さにあります。トリプルガラスは3枚のガラスと2つの空気層で構成されており、ペアグラスよりも外気温の影響を受けにくいのが特徴です。夏は涼しく、冬は暖かい家づくりを希望される方にとって、トリプルガラスの窓は非常に役立ちます。外気の冷え込みが激しい冬でも室内の温度を一定に保ちやすいため、北海道のような寒冷地ではトリプルガラスの窓は人気があります。
光熱費を削減できる
トリプルガラスは窓の断熱性を高め、室内の熱が逃げにくくなるというのが魅力です。冬の暖房効率が上がり、電気代をはじめとした光熱費を大幅に削減できます。外気温が急激に下がっても室内温度の変化が少ないため、暖房機器の電力消費が抑えられるためです。また、トリプルガラスは遮熱性能が高く、夏場のエアコンも効きが良くなります。つまり、年間を通して光熱費の節約に効果的です。
結露が発生しにくい
窓の結露は、室内の湿った暖かい空気が冷えた窓ガラスに触れると発生します。室内と屋外の温度差が大きくなる冬場に生じやすく、放っておくとカーテンや窓の周りがカビてしまう原因です。ぜんそくやアレルギーを引き起こすリスクがあるだけでなく、木造住宅では建材の腐食のきっかけにもなります。トリプルガラスの窓なら冷たい外気を遮断でき、結露の発生リスクを軽減できるというのが利点です。
遮音性が高い
注文住宅を建てる土地が大きな道路に面していたり、隣家との距離が近かったりすると、騒音が問題となります。ガラスは厚いほど遮音性に優れているため、単板ガラスよりも複層ガラスのほうが遮音に効果的です。トリプルガラスは3枚構造のため、外から聞こえる音を和らげるのに役立ちます。また、室内の音が外に漏れるのを防ぐ作用もあるので、小さなお子さんが走り回る音やペットの鳴き声が気になるご家庭にもおすすめです。
防犯になる
警察庁のデータによると、泥棒が一戸建て住宅に侵入する経路として最も多いのは窓とされています。空き巣対策として、窓の防犯性を高めるのは非常に重要です。トリプルガラスはガラスが3枚あるため、シングルガラスやペアグラスよりも割るのに時間がかかります。泥棒は人目につくのを嫌がるため、簡単に侵入できない家を避ける傾向があります。そのため、住まいの防犯性を考えてトリプルガラスの窓を採用するのも1つの方法です。
(参考:警察庁「住まいる防犯110番」)
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トリプルガラスの窓を導入するデメリットと対処法
トリプルガラスの窓には多くのメリットがあるものの、導入を検討する際には注意すべき点も存在します。入居後に後悔しないためにも、デメリットと対処法を理解しておくことが重要です。
初期費用が高い
トリプルガラスは、シングルガラスやペアガラスと比べてガラスの枚数が多くなっています。構造も複雑で、価格も高めに設定されているのが特徴です。家の窓をすべてトリプルガラスにすると、総額が予算を超えてしまう可能性もあります。断熱性の向上によって光熱費を抑えられたり、結露による住宅の傷みが減ったりというメリットを考慮しつつ、長期的な視野で初期費用を回収できるかどうか検討しましょう。
重量や厚みがある
トリプルガラスの窓は3枚のガラスを使用しているため、開閉に重みを感じる人もいます。重みを負担に感じてしまうと、毎日の換気が億劫になってしまう原因です。製品によっては、取っ手やハンドルで開閉を手助けしてくれるものもあるので、事前にモデルハウスやショールームで試してみると良いでしょう。また、窓の厚みが増すという問題もあるため、ハウスメーカーや工務店の担当者に相談しながら窓枠やサッシの選択を進めると安心です。
選択肢が少ない
トリプルガラスの窓には、大きさや開き方のバリエーションが少ないという難点があります。各メーカーのカタログでも単板ガラスやペアガラスと比べて種類が少なく、間取りによっては希望の窓が設置できないかもしれません。設計の自由度が高いという理由で注文住宅を選んだ場合、採光の具合や窓への要望を設計担当者に伝えてみましょう。プロの視点から別のアイデアをもらえる可能性があります。
トリプルガラス窓導入のポイントと注意点
トリプルガラスの窓を導入する際には、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。初期費用をかけて設置しても、メリットを感じられないと後悔の原因です。注文住宅の窓にトリプルガラスを検討中の方は、以下の点に注意しましょう。
定期的なメンテナンスが必要
ガラス自体は半永久的な素材ではあるものの、複層ガラスには寿命があります。ガラスの間に封入されたガスが抜けて内部に結露が発生しやすくなるためで、30〜35年を目安に交換が必要です。また、サッシや窓のパッキン部分は約10年で経年劣化するとされ、トリプルガラスの窓は定期的なメンテナンスや交換が欠かせません。事前にメンテナンスのスケジュールや費用も把握した上で、導入の検討を進めるのがおすすめです。
窓だけでなく家全体の断熱性や気密性も重要
トリプルガラスによって窓の断熱性は向上するものの、壁から外の暑さや寒さが伝わってしまうと効果が半減してしまいます。室内の温度を一定に保つためには、家全体の断熱性と気密性を高めるのが重要なポイントです。高断熱・高気密の住宅を建てると、冷暖房機器の稼働率も下がり、省エネにも貢献できます。住む人にとっても光熱費を削減でき、トリプルガラスの恩恵をより受けやすくなるのもメリットです。
注文住宅の断熱性や気密性基準
多くのハウスメーカーが使用する「高断熱」や「高気密」という言葉には明確な基準がなく、それぞれが独自に定義しています。しかし、断熱性や気密性を示す数値は存在するため、注文住宅を建てる際は、以下の数値を参考にハウスメーカーや工務店を選びましょう。
UA値(ユーエーチ) |
家の断熱性能を評価するための数値で、小さいほど断熱性が高くなります。国土交通省の定める省エネ基準では、2024年現在、UA値0.87以下が求められています。しかし、2030年を目安に今後は0.6以下に引き下げられる見込みです。 |
C値(シーチ) |
建物全体の隙間を数値で表したもので、低いほど気密性能が高いことを意味します。国の省エネ基準にC値は採用されていないものの、C値1.0以下が一つの目安となります。 |
上記はあくまでも最低基準の目安で、ハウスメーカーによって数値はさまざまです。たとえば、アイフルホームでは最高基準のUA値0.26を採用した家づくりを行っており、UA値0.87の住宅と比べて、年間の冷暖房費用を約10万円節約できます。トリプルガラスの費用対効果を考えると、高断熱・高気密性能の住宅と組み合わせるのがおすすめです。
(参考:三宅工務店「断熱・気密性能」)
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補助金を視野に入れて予算を立てる
トリプルガラスの窓は初期費用が高いとお伝えしたものの、子育て世帯や若者夫婦世帯が注文住宅を建てる際には「子育てエコホーム支援事業」の補助金制度を活用できます。子育てエコホーム支援事業者と契約し、長期優良住宅またはZEH住宅を新築するというのが最低条件です。すべての要件を満たした場合に限り、1戸あたり最大100万円の補助を受けられます。
対象となる子育て世帯または若者夫婦世帯の定義は以下の通りです。
子育て世帯 | 申請時点で2005年4月2日以降に生まれた子を有する世帯 (2024年3月31日までに建築着工する場合は2004年4月2日以降に出生) |
若者夫婦世帯 | 申請時点で夫婦のいずれかが1983年4月2日以降に生まれた世帯 (2024年3月31日までに建築着工する場合は1982年4月2日以降に出生) |
長期優良住宅とZEH住宅に関しては、申請する住宅が基準に適合していることを第三者機関から証明してもらう必要があります。ただし、補助金の交付申請はエコホーム支援事業者に登録済みのハウスメーカーや工務店が行うので、煩雑な手続きは不要です。予算の関係でトリプルガラスを諦めている方は、補助金制度の活用を検討してみましょう。
まとめ
注文住宅の窓にトリプルガラスを採用すると断熱性が向上し、光熱費削減や結露の抑制が期待できます。新居の室温が一定に保たれ、省エネにも役立つというのもメリットです。しかし、トリプルガラスの窓は開け閉めが重く、種類が少ないというデメリットもあります。導入費用がかかるという課題もありますが、長期的に考えると初期費用を回収できる可能性も十分です。費用対効果を上げるためには、住宅の熱性や気密性も重要です。注文住宅を依頼する際には、十分な技術と実績を持つハウスメーカーや工務店を選びましょう。