家庭用蓄電池は元が取れないって本当?太陽光発電やV2Hとの組み合わせもシミュレーション
「蓄電池は電気代がお得になる」と謳われる一方で、「元が取れない」という声もあります。注文住宅の光熱費を削減すべく導入しても、後悔の原因となってしまったら本末転倒です。この記事では、家庭用蓄電池は本当にお得なのかをシミュレーションします。経済的なメリット・デメリットだけでなく、太陽光発電やV2Hとの組み合わせについても解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
蓄電池は電気の貯蔵と供給が可能
家庭用蓄電池は、電気を貯めたり、必要な時に供給したりできる設備です。電気を放出するだけでなく、充電して繰り返し使える電池は「二次電池」でもあります。スマートフォンやパソコン、デジタルカメラのバッテリーを例に考えるとわかりやすいでしょう。電気を使い切っても充電すれば再び使えるため、環境にもやさしいと注目されています。
蓄電池の充電方法は2種類
蓄電池に貯められる電気は大きく2つに分けられます。1つ目は電力会社から購入した電気で、もう1つは太陽光発電で生成した電気です。それぞれのメリットとデメリットを見てみましょう。
電力会社から購入
電力会社ごとに料金単価が設定されているため、加入しているプランによって使い方が異なります。たとえば、夜間の電力量料金単価が安い料金プランに加入している場合は、電気を貯めるのは夜に行い、料金単価が高くなる昼間に使うとお得です。プランに合った工夫を凝らせば、電気代を安く抑えられるのがメリットとなります。また、災害に備えて一定の電気を蓄電池に貯めておくというのも使い方の1種です。
太陽光発電で生成
太陽光発電システムの導入には、設置費用やメンテナンスコストがかかります。ただし、CO2を発生させずに環境にやさしいというのがメリットです。太陽光発電は電気を生成できるものの、電力を貯めておけないという課題があります。蓄電池と組み合わせれば、夜間や雨天時にも利用できるようになって便利です。さらに、災害時に停電が発生しても、太陽光発電で生成した電気を貯めておけます。
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蓄電池の経済的効果は?
蓄電池は電気料金の節約をはじめ、経済的なメリットが期待される設備です。しかし、同時に初期費用やメンテナンス費用の高さが課題となり、人によってはお得にならない場合もあります。
経済産業省のデータによれば、2022年度の家庭用蓄電システムの価格は1kWhあたり11.7万円でした。工事費を合わせると、初期費用は1kWhあたり13.9万円となります。一般的な家庭用蓄電池は7kWh〜10kWh程度の容量を持つため、導入には約97万円〜130万円が必要です。太陽光発電システムと同時に設置すると、さらに高額な費用を用意しなければなりません。
蓄電池の初期費用を回収できるかシミュレーションできるサイトもありますが、正確な判断は非常に困難です。なぜなら、蓄電池には寿命があり、使用回数が増えると充電容量が減少します。また、売電価格は毎年変動し、将来的には低下する見込みです。太陽光発電と併用する場合は、天候や季節によって発電量が変動することも考慮します。
蓄電池の経済的効果は全体的に不透明であり、社会情勢や天候の動向にも影響されることを念頭に置いておきましょう。
(出典:経済産業省「定置用蓄電システムの普及拡大策の検討に向けた調査」)
太陽光発電と蓄電池をセットで導入するメリット
費用対効果だけで考えると、必ずしも蓄電池の導入がおすすめとは明言できません。しかし、家庭用蓄電池は、電力を蓄えられるという点においてさまざまなメリットがあります。
月々の電気代が削減
太陽光発電システムに蓄電池を加えると、毎月の電気代が削減できます。太陽光パネルが稼働できない夜間や雨天時でも、電力を供給できるためです。不足分の電力を自宅で生成でき、電力会社からの購入が不要となります。とくにオール電化住宅ではメリットを感じやすく、新築時に太陽光発電と蓄電池を選ぶ方は増加傾向です。容量や性能によるものの、太陽光発電システムのみと比べると毎月の光熱費が抑えられます。
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災害時でも電力を確保
太陽光発電と組み合わせると、災害時でも家電を稼働させ続けることが可能です。蓄電池のみの場合、電力会社からの配電が停止してしまうと何も役に立ちません。しかし、太陽光発電があれば電気を生成でき、小さなお子さんや高齢者のいるご家庭にとっては安心です。地震や台風による停電は、体調を悪化させるリスクもあります。蓄電池だけでは長期間の電力供給に不安が残るものの、太陽光発電と組み合わせれば自宅避難も可能です。
ピークカットに対応
暑さや寒さのピークを迎える季節は、多くの家庭でクーラーや暖房器具を使用します。電力消費が急増するため、電力会社の供給が追いつかなくなるという話題を耳にした経験はありませんか。電力不足を防ぐ方法の1つとして、ピークカット(電力の使用量が最も多い時間帯に、電力使用量を削減する)があります。家庭に蓄電池があれば、ピーク時の電力を電力会社から買わずに自家消費に切り替えることが可能です。
FITが10年で終了しても自家消費で役立つ
太陽光発電システムを導入してから10年間は、固定買取価格制度(FIT)に基づいて売電できます。しかし、10年経過後はFITの対象外となり、より安い価格で電力を売らなければなりません。電力会社によって異なるものの、買電価格より売電価格が低く設定されているというのが一般的です。そのため、FITが終了後は、電力を売るよりも自宅で使用して電気代を節約したほうが節約になり、蓄電池が大いに役立ちます。
蓄電池の導入を成功させる5つのチェックポイント
注文住宅に蓄電池を導入する際は、いくつかのポイントを抑えて選ぶと失敗しません。消耗品ではなく、大きな買い物となるため、ご自身のライフスタイルや目的に応じた製品を選びましょう。
蓄電容量
蓄電容量とは、蓄電池に貯められる電気量を示す指標です。4人家族の場合は、7kWh〜10kWhの容量が適切とされています。以下の家電を稼働させられるため、災害時でも安心です。
・冷蔵庫 ・エアコン ・照明 ・電子レンジ ・IH調理器 ・洗濯機など |
家庭用蓄電池は高価なため、保証やメンテナンスについての確認も重要です。10kWh以上の容量だと太陽光発電による充電が完了しない場合もあるため、事前に販売店へ確認しましょう。
最大出力
最大出力とは、バッテリーから瞬時に供給される電力量を表します。WやkWで表示され、数値が大きいほど多くの電化製品が同時に使用可能です。家庭用蓄電池の最大容量が1日の消費電力量を上回る場合は電力不足が予想されるため、太陽光発電で生成するか、電力会社から購入して補います。太陽光発電で日中の電力をまかなうご家庭では、夜間に使うだけの電力量があれば十分でしょう。蓄電池選びをきっかけに、家庭の消費電力量を調査し、電力会社のプランを見直してみるのもおすすめです。
分電盤への接続方法
蓄電池を分電盤に接続する方法には、「全負荷型」と「特定負荷型」の2つのタイプがあります。
全負荷型
全負荷型は、家庭で使用するすべての電気製品に電力を供給できる仕様です。リビングでテレビを見たり、キッチンで冷蔵庫を使ったり、子ども部屋でパソコンを使ったりできます。2世帯やオール電化住宅、全館空調のように常時稼働させておく電気設備が多いご家庭向けのタイプです。
特定負荷型
特定負荷型は、あらかじめ指定した部屋や電化製品にのみ電力を供給するタイプです。多くの電化製品は使用できないものの、少量の電力を効率的に使えるというのがメリットです。小容量の蓄電池でも長期間持続し、価格も全負荷型よりも安い傾向があります。停電時には最低限の電化製品だけを動かせばよいご家庭向におすすめです。
サイズ
蓄電容量が大きいほど、蓄電池の本体サイズは大きくなります。容量が10kWhを超えると、幅が1mを超える製品も珍しくありません。設置後のメンテナンスを考えると、周辺には作業スペースも必要です。敷地面積があまり広くない場合は、希望通りの製品が設置できない可能性もあります。大容量タイプを導入したい方は、事前に住宅会社や工務店の担当者に相談しましょう。注文住宅であれば、自由度の高いアドバイスを提案してもらえます。
保証期間と内容
住宅用蓄電池のメーカー保証期間は、10年〜15年程度に設定されているのが一般的です。蓄電池の寿命は10年以上とされ、最近では20年保証の製品も登場しています。そのため、10年保証を最低ラインとし、オプションがあれば有料であっても15年保証にしておくと安心です。
保証内容には「容量保証」も含まれており、保証期間内に蓄電容量が決められた割合以下になると適用されます。具体的には、修理や交換によって蓄電容量を保証してくれるシステムです。多くのメーカーは初期の蓄電容量の60%を下回った場合が基準となっているものの、容量保証の内容も十分に確認しましょう。
蓄電池の代替として注目を集めているV2H
V2H(Vehicle to Home)は、EV(電気自動車)で充電された電力を家でも活用するシステムです。EVに搭載されたバッテリーは家庭用蓄電池よりも大容量なものの、電力の形式が異なります。V2H装置があれば直流から交流への変換が可能となり、EVから家庭への電力供給や逆に家庭からEVへの電力供給が実現可能です。
V2Hと蓄電池の違いは蓄電機能の有無
V2H機器と蓄電池の主な違いは、蓄電機能の有無です。V2H機器の役割は電気変換が主なため、蓄電機能は備わっていません。ただし、V2H機器と蓄電池を一体化したシステムも存在し、ほとんどが太陽光発電との併用が可能です。V2H・蓄電池・太陽光発電の3つを合わせて使うことをトライブリッド型と呼び、電力の自家消費が最も効率的になります。
V2H機器と蓄電池を併用するメリット
自宅に太陽光発電住ステムを設置する場合、V2H機器と蓄電池を導入してトライブリッド型を目指すのがおすすめです。
効率的な電力消費と充電を実現
V2H機器と蓄電池を組み合わせれば、夜間に電力を充電し、昼間に使用できます。さらに、蓄電池が満タンになったらEVも充電できるため、太陽光発電で生成した電気を余すことなく活用可能です。
EVの余剰電力を非常用電源として活用
家庭用蓄電池は災害対策としても人気があるものの、容量や種類によっては停電時に電力不足に陥ってしまいます。V2H機器があれば、蓄電池よりも容量が多いEVの電力を家庭に供給できます。
深夜電力や太陽光発電の余剰電力を貯められる
緊急時の非常用電源になるとお伝えした通り、EVは蓄電池としても活用可能です。深夜電力や太陽光発電の余剰電力を電気自動車にも貯められ、自家消費の幅を広げられます。
蓄電池なしでV2H機器を使用して得られる効果
蓄電池なしでV2H機器を導入しても、以下のように暮らしに役立つので便利です。
- V2Hを利用して、家庭で発生した余剰電力をEVのバッテリーに貯められる
- EVのバッテリーを家庭に供給できる
- 災害時の電力源として活用可能
電気自動車を蓄電池の代わりに使うとイメージすると理解しやすいでしょう。ただし、EVの充放電サイクル数が増加するため、バッテリーの劣化が早まるというリスクもあります。
V2H機器と蓄電池の併用がおすすめの人
V2H機器と一緒に蓄電池を自宅に導入するメリットがあるのは、以下のような人です。
- V2H対応の電気自動車に乗っている
- 住宅購入後にEVの購入を検討中
V2HはEVとセットで使うので、車を使わないご家庭にはあまり向いていません。また、ご自身のEVがV2Hに対応しているかどうかの確認も必要です。近いうちに車を買い替える予定がある場合は、蓄電池よりもV2Hを導入したほうがコストを下げられる可能性もあります。
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まとめ
蓄電池を導入しても元が取れないかどうかは、考え方によっても異なります。2024年時点では初期費用が高く、太陽光発電で生成した電気を売って初期費用を回収するのは難しい状況です。しかし、毎月の電気代を抑えられ、本体価格も下がる可能性があります。経済的な部分だけでなく、停電時に役立つという点においては価値のある防災対策です。V2Hや太陽光発電と合わせた導入を検討し、ご家庭にあったメリットを探していきましょう。