スキップフロアとは?魅力や間取りなど徹底解説
空間を有効活用できるだけでなく、見た目もおしゃれで魅力的なスキップフロア。しかし、スキップフロアの上手な活用方法が分からず、失敗するかもしれないと導入をためらう方もいるのではないでしょうか。
この記事では、スキップフロアの魅力や、デメリットと解決方法、有効活用できる土地の種類など、詳しく解説していきます。スキップフロアのメリットを活かして、おしゃれな家を建てたい方は、ぜひ参考にしてください。
スキップフロアとは?
スキップフロアとは、フロアの階層を上下どちらかに半階ずらした空間をつくることで、居住スペースを増やす建築方法のことです。1階と2階の間につくると「中2階」、1階と地下1階の間の空間は「半地下」「ダウンフロア」とも呼ばれます。
- 天井の高さが1.4m以下
- 直下階の床面積の2分の1未満
建築基準法のこれらの条件を満たしていれば、容積率の延べ床面積に加算されません。しかし、開放感やデザイン性のある間取りにしたり、吹き抜けにしたりすると、延べ床面積に加算されるので注意が必要です。
似たような空間に「ロフト」がありますが、ロフトは屋根裏に当たる場所に設けられる空間で、建築基準法では「小屋裏物置等」の位置付けです。
- 天井の高さが1.4m以下
- はしごが固定されていない
- 直下階の床面積の8分の1未満
ロフトは上記の条件を満たすと、延べ床面積に入らず、居室としてカウントされません。
後悔しないために知っておきたいスキップフロアのデメリットと対策
スキップフロアは、縦の空間を利用した間仕切りのない開放感が魅力ですが、それによってデメリットが生じます。しかし、マイナス面を対策することで、かなり改善できます。
この章では、スキップフロアをつくるデメリットとその対策を、詳しく解説します。
空調の効率が悪い
スキップフロアのある家は、空調や冷暖房の効きが悪くなりやすいというデメリットがあります。スキップフロアは、階段で縦方向につながる巨大なワンルームのような空間のため、空気が各階に抜けやすいためです。
住宅の設計段階から対策し、断熱性や空気の流れに配慮する必要があります。
対策①シーリングファンやサーキュレーターを使って空気の流れを制御
暖かい空気は上部に、冷たい空気は下部に移動しやすい性質を利用し、シーリングファンやサーキュレーターでコントロールします。高い位置に窓を設置することで、キッチンの臭いを逃がすなど、空気の流れを誘導しましょう。
対策②高断熱高気密住宅で空調負荷を軽減
スキップフロアのある家は、間仕切りのない巨大なワンルームのような構造です。そのため、高断熱・高気密性能を備えた家であれば、1つの冷暖房設備で住宅全体の室内温度を制御できます。
換気対策も設計に組み込むことで、効率よく空気の流れをつくれます。
バリアフリーにできない
スキップフロアを採用すると、広い空間をバリアフリーにすることは難しくなります。階段の中間がフロアになるため、階段の上り下りが増え、老後が心配という方もいるでしょう。
また、スキップフロアによって床面積が増えることは掃除の手間も増えます。各階に掃除機やモップを持って移動しなければならず、動線の悪さを感じるでしょう。段差が多くなるため、場所によっては掃除ロボットを活用できません。
対策①主要な動線にステップフロアをつくらない
ひんぱんに行き来する動線や、リビング周辺にステップフロアをつくらない設計にすれば、負担を軽減できます。スキップフロアに使用頻度の高いものを置かないことも、行き来の回数を減らすコツです。
主要な動線上で上り下りが少なくなれば、乳幼児や高齢者の安全を確保しやすくなることにもつながります。
対策②段差を小さくして、負担を少なくする
スキップフロアで使う階段の段数を増やし高低差を少なくしたり、ステップの幅を広げたりして、上り下りの負担を減らしましょう。階段の上り下りをしやすくするための、手すりの設置もおすすめです。
各階が狭くなり個室が作りづらい
スキップフロアのある家は、個室数が少なくなったり、部屋の床面積が狭くなったりする場合があります。スキップフロアによって、各階の床面積が制限されるため、1つのフロアが広く使えないためです。
個室代わりとしてスキップフロアを使うためには、プライバシーを確保する工夫も必要です。
対策①座る位置で目線を外す
スキップフロアにいると、他の階からの視線が気になることがあります。ライブラリーや書斎、勉強部屋として使う場合は、集中できるよう壁に向かって座ることで、目線を外す対策をしましょう。
対策②パーテーションを設置
パーテーションを準備しておくと、スキップフロアを簡易的な部屋として使うことも可能です。来客用の宿泊部屋が必要になったり、思春期の子どもが部屋を欲しがったりしたとき、部屋の数が少なくても対応できます。
設計・建築の難易度が高い
スキップフロアのある家を建てるには、スキップフロアのない住宅に比べて建築上の難しさがあります。階層構造が複雑になる上に、容積率に注意しながら、建築基準法に適した設計をする必要があるからです。
さらに、使いやすさやおしゃれな空間を手に入れるには、依頼する工務店選びも重要です。
対策①スキップフロアの実績豊富な工務店に依頼する
スキップフロアのある家は、建物の耐震性を確保しながら複雑なフロア設計が必要なため、設計・施工には豊富な経験が求められます。そのため、スキップフロアの設計・施工は、十分な実績がないと非常に困難です。
必要な部屋数やこだわりの空間などの要望をかなえてくれる、確かな技術力を持った工務店にしましょう。
対策②スキップフロアを含めた容積率に注意する
スキップフロアで床面積が増えると、建物全体の容積率にも影響します。スキップフロアが床面積に含まれるかの判断は自治体によって異なるため、それらを事前に把握しておらず万が一自治体から指摘された場合、修正することもあります。
また、スキップフロアを導入することで課税対象面積が増えると、固定資産税が増加することも考えられます。スキップフロアのある家を建てる際は、用途地域の種別や税金についてなど相談できる、ステップフロアの設計に慣れた工務店に依頼することをおすすめします。
建築費用が高い
スキップフロアを導入すると、建築費用が高くなる傾向があります。スキップフロアではフロアを挟んで上下に階段を設けたり、耐震性能を高めるため通常の木造建築に使わない構造材や耐力壁を使ったりすることがあります。
このため、建築費用が一般的な戸建て住宅と比べて、高くなりやすいのです。
対策①費用対効果を検討する
スキップフロアのある家で過ごす家族にとっての、費用対効果やメリットを確認してみましょう。狭小住宅や収納が少ない間取りでも、スキップフロアを上手に活用することで、空間を最大限広く使えます。
対策②構造計算によって耐震性能を確保
スキップフロアを採用した住宅は、フロアに対して間仕切り壁が少なく、階によっては床が壁とつながっていません。そのため、耐震性能を確保するには、難易度の高い構造計算が必要です。
デザイン性をかなえながらも、安全な家づくりができる工務店に依頼しましょう。
おしゃれな空間がつくれるスキップフロアのメリット
スキップフロアがあると、空間にメリハリができるため、おしゃれでデザイン性のある家づくりが可能です。
ここではスキップフロアを導入するメリットを解説します。
空間が広く使える
スキップフロアはフロアの階層をずらしたことで床面積が増えるだけでなく、間仕切り壁や扉がないため、空間が広々と感じられます。そのため、通常の新築住宅にはない、個性的でおしゃれな雰囲気を出せるのが魅力です。
開放的で明るい空間になる
スキップフロアは間仕切りがなく開放的であるため、隣接する空間同士の風通しが良くなります。
また、階層同士がワンルームのようにつながっていることで、窓からの光が差し込みやすく、日当りのよい室内で快適に過ごせます。
階段下を利用して収納が増やせる
家を建てるとき、収納を確保することは、多くの施主にとって大きな課題です。スキップフロアを使えば、段差の多い構造を利用して、階段下を広い収納スペースとして使うこともできます。
その場合、天井高を1.4m以下にすれば床面積に含まれず、容積率にも加算されません。
おしゃれで快適な空間がつくれる
スキップフロアを導入した家は、デザイン性や快適性が向上し、満足度の高い空間がつくれます。スキップフロアを使うと適度に空間を分けやすく、立体的なデザインで設計できます。
さらにおしゃれ空間にするならば、蹴込み板のないスケルトン階段がおすすめです。隙間が増えることで、採光や風通しもさらによくなり、家全体のつながりが強化されます。
家族の気配を感じられる
スキップフロアの家は空間がゆるやかにつながっているため、家族の気配を常に感じられます。見守りが必要な、小さな子どもや高齢の家族の様子が見えるため、安心感があります。
一方、階層によって個室のように空間を分け、それぞれの場所で好きなことをして過ごせるのも、スキップフロアの魅力です。
限られた土地を有効活用できる
都市計画法では、エリアによって建物の高さに制限が設けられています。しかし、スキップフロアを導入することで、平屋でも内部で階層を増やし、床面積を広げられます。
狭小住宅や傾斜地などの特殊な土地で住宅を設計する場合は、スキップフロアを使えば必要な床面積を確保したり、デッドスペースを有効活用したりすることが可能です。
スキップフロアが有効活用できる土地の種類
スキップフロアを上手に活用すると、特殊な形状や条件の土地でも、延床面積以上に広い間取りをつくることが可能です。
この章では、スキップフロアを有効活用できる土地の種類について解説していきます。
防火地域または準防火地域に指定された土地
住宅や商業施設が密集するエリアには、防火地域や準防火地域に指定された土地があります。そのような土地に家を建てる場合、建築基準法で定められた機能を持つ建物を建築しなければなりません。その条件は、家の延べ床面積や階数によって異なります。
例えば、防火地域と指定された土地の建築制限は以下の通りです。
- 3階建て以上の建物は、防火窓や防火ドアを使用した耐火建築物
- 2階建てで延べ床面積が100㎡以下の建物は耐火建築物または準耐火建築物
- 2階建てで延べ床面積が100㎡以上の建物は耐火建築物
このように条件が厳しい地域で、しっかりと居住スペースを確保するには、スキップフロアがおすすめです。
廊下や間仕切り壁を使わないスキップフロアを活用すれば、条件にある家の延べ床面積や階数を守りながら、自分の生活にあった空間を確保できるためです。
厳しい斜線制限のある土地
斜線制限とは、隣接する家や道路の風通しや日当たりを確保するための制限で、建物の上部を斜めに傾斜させなければならないエリアもあります。そのような厳しい制限の土地に家を建てる場合でも、スキップフロアを導入すれば、制限の傾斜に沿って住宅内部のフロアを配置することが可能です。
例えば2階建て住宅の場合、斜線制限のある方角の反対側に「中2階」や「半地下」をつくることで、広いスペースを確保できます。
面積が狭い土地
狭小住宅では、スキップフロアのメリットを有効に活用できます。スキップフロアの家では、空間を区切るための廊下や間仕切り壁を使いません。
階段を使って縦方向に空間をつなげられるため、狭小住宅ではそれぞれのフロアを隅々まで使えます。天井の低い空間は収納スペースとして利用すれば、無駄なく活用できるでしょう。
高低差のある土地
スキップフロアは高低差のある土地で、段差を活かした間取りを設計することに向いています。
2階建て住宅の場合、2パターンの間取りが考えられます。
- 土地の一番低い部分を「1階」、高い部分を「中2階」、高い部分の上階を「2階」
- 土地の一番低い部分を「ダウンフロア」、高い部分を「1階」、高い部分の上階を「2階」
階段を数段ずらした中間層のフロアをつくることで、デッドスペースを活用しやすくなります。
スキップフロアの魅力を引き出す間取りの事例
ここでは、スキップフロアを使った間取りの事例を紹介します。
リビングをゆるやかに区切るスキップフロア
広いリビングを、小上がりやダウンフロアによって区切れば、メリハリのある空間が演出できます。リビング・ダイニング・キッチンを分けたり、ソファのある空間と、寝転んでくつろぐスペースをつくったりもできます。
スキップフロアで床の高さを変え、用途によって空間をゆるやかに分けると、見た目にもおしゃれで使いやすい空間になるでしょう。
ビルトインガレージと中2階のスキップフロア
ビルトインガレージとスキップフロアの組み合わせは、空間を有効活用できます。ビルトインガレージのある住宅の1階は、道路に直接つながる構造のため、一般的な住宅よりも床面が低くなります。
そこで、スキップフロアで中2階を設けることで、ビルトインガレージ内の天井が高くすれば、開放的な空間が出現します。さらに吹き抜けと組み合わせれば、1階が光あふれる明るい空間となるでしょう。
半地下のスキップフロア
半地下のスキップフロアは、リビングから近くとも、独立させたい空間におすすめです。半地下につくられた空間は、隠れ家や秘密基地のようで、ライブラリーやワークスペースに向いています。
容積率や建築コストをおさえるため、天井高を低くして、収納スペースにする方法もあります。
まとめ
スキップフロアの機能性やデザイン性を十分に理解し、上手に取り入れられれば、特殊な形状の土地や制限が厳しい土地でも、満足のいく快適な設計が可能です。
実績豊富な工務店に相談しながら、スキップフロアの特徴を活かした家づくりを進めましょう。