老後の暮らしを快適にする間取りと設備のポイントは?注文住宅の家づくりを成功させるコツ
高齢者向け住宅のイメージ

家づくりコラム

老後の暮らしを快適にする間取りと設備のポイントは?注文住宅の家づくりを成功させるコツ

高齢者向け住宅のイメージ

老後の暮らしを快適にするためには、安全な家づくりを意識した間取りや設備選びが重要です。若い頃は便利に感じていても、年齢を重ねると不便に感じることが増えるためです。階段の上り下りがきつくなったり、少しの段差でつまずきやすくなったりと、体の変化に対応した家が求められます。この記事では、老後の生活に役立つ間取りと設備のポイントを解説しますので、注文住宅を検討中の方は最後までお読みください。

老後の暮らしはどう変わる?間取り選びで押さえるべきポイント

階段を上るシニア女性

若いときと比べて、老後の暮らし方は大きく変わります。体力や健康面での変化だけでなく、家族の人数にも変化があるためです。

たとえば、年齢を重ねると足腰が弱くなり、少しの段差でもつまずきやすくなります。階段の上り下りがきつくなり、洗濯物をベランダまで運ぶのが大変になるケースも少なくありません。転倒してしまうと、骨折によって入院が必要になる可能性もあります。他にも、トイレが近くなり、夜に何度も起きるようになるという変化もあるでしょう。

家族構成にも変化が現れ、マイホーム新築時に小さかったお子さんも成人を迎えます。進学や就職で家を出るタイミングで、夫婦二人だけの生活が始まるかもしれません。子どもが使っていた部屋は空き部屋になり、「気がついたら物置のようになっていた」とならないように注意が必要です。

老後の生活は家を建てたときの暮らし方とは大きく変わるため、高齢者に優しい住宅設計を考慮しないと後悔するポイントが増えてしまいます。住宅購入時には便利だった住まいも、年齢と共に不便に感じるものです。とくに30代前後で注文住宅を建てる場合は、将来を見据えておくと良いでしょう。

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老後も快適に暮らせる間取りのコツを徹底解説

老後も安心な玄関のスロープ

老後も快適に暮らすためにはシニア向けの間取りを意識した家の設計が重要で、老後も安全な家にするために寝室とトイレの距離を短くすることが大切です。バリアフリー性能を備えていても、間取りが不適切だとケガや事故のリスクは減りません。ここでは、老後に後悔しやすい6つの間取りを紹介しますので、安全で体に負担の少ない家づくりの参考にお役立てください。

老後の間取りで後悔しやすいポイント①:寝室からトイレが遠い間取り

高齢になると、少しの段差でもつまずきやすくなります。寝室からトイレまでの距離が遠いと、転びやすくなるリスクが高まるので注意が必要です。

トイレは毎日使う場所で、年齢が上がると夜中も頻繁に行くようになります。寝ぼけた状態での移動は危険なため、寝室からトイレが遠いと不便です。「最近の家は段差がないから大丈夫」と思うかもしれませんが、年を取ると筋力が落ちて足が上がりにくくなります。何かのきっかけでバランスを崩すと、あっという間に転んでしまうものです。骨も年齢と共に弱くなるので、わずかな衝撃でも骨折しやすく、回復にも時間がかかります。

太ももの付け根の大腿骨を折ると寝たきりになる場合もあるため、寝室の近くにトイレを設ける間取りがおすすめです。朝起きたらトイレに行き、そのまま顔を洗ったり身だしなみを整えたりできるので、近くに洗面台を置くのも良いでしょう。夜も歯磨きの後にすぐトイレを使って寝室に行けるので、移動がスムーズになります。

老後の間取りで後悔しやすいポイント②:1階にベッドスペースがない家

注文住宅を設計するにあたって、2階に寝室を設けるケースは少なくありません。しかし、高齢になって階段を上がるのが大変になると、1階で寝起きしたほうが安全で身体への負担も減らせます。

また、布団は小さなスペースでも敷けますが、年齢を重ねるとベッドのほうが寝起きの動作が楽です。新築時に寝室を1階につくると、収納を含めて10畳くらいの広さが必要となります。敷地の広さが不足する場合は、1階に4畳半くらいのユーティリティスペース(多目的スペース)を設けるのがおすすめです。4畳半あればシングルベッドを2台置けるので、将来的に寝室として使えます。

寝室として使用するまでは、お子さんの遊び場やワークスペース、物干しスペースとしても使用可能です。ユーティリティスペースがつくれないようであれば、リビングやダイニングにベッドを置けるように間取りを考えておきましょう。たとえば、ソファを片付けてダイニングテーブルを移動させ、空いた場所にベッドを置く方法があります。

老後の間取りで後悔しやすいポイント③:トイレが開き戸になっている間取り

トイレのドアが開き戸だと、開けるときに扉を手前に引かなくてはなりません。後ろに1~2歩下がる必要があり、足がふらついて転んでしまう恐れがあります。若いときは気にならない動きでも、年を取るとバランスを崩しやすくなるため注意が必要です。

トイレのドアは引き戸にすると、扉を横にスライドさせて開閉できます。後ろに下がる必要がなく、転倒のリスクが減って安全です。トイレのドアを引き戸にしたい場合は、注文住宅を設計する段階でハウスメーカーや工務店に相談しましょう。引き戸は開き戸とつくりが異なるため、後から変更が難しい場合があるためです。

トイレのドアは引き戸にすると、扉を横にスライドさせて開閉できます。後ろに下がる必要がなく、転倒のリスクが減って安全です。トイレのドアを引き戸にしたい場合は、注文住宅を設計する段階でハウスメーカーや工務店に相談しましょう。引き戸は開き戸とは構造が異なるため、後から変更が難しい場合もあるためです。

また、ドアの位置も工夫すると、介護が必要となったときに大きな助けとなります。ドアが便器の正面にある場合、中で体を180度回転させる必要があります。しかし、便器の横から入れる配置にすると体の向きを90度変えるだけで済むため、動きがスムーズです。トイレのドアを選ぶ際は、位置も含めた間取りの検討をおすすめします。

老後の間取りで後悔しやすいポイント④:玄関を狭く設計してしまう

老後のことを考えると、玄関は広いほうが安心です。玄関のスペースに余裕があれば、腰掛けや車椅子のように生活を補助する道具を置けます。高齢になると腰を深く曲げるのが大変になり、靴を履いたり脱いだりするのがつらくなるものです。靴を履く際に腰をかけられる場所があると、靴の脱ぎ履きが楽にできます。

玄関用の腰掛けとしては、幅が50〜60cm、奥行きが45cmほどあれば十分です。さほど大きくないので、一般的な1間幅(約2m)の玄関なら問題なく置けます。腰掛けがあれば、妊婦さんやお子さんも靴を履くときに使えるだけでなく、買い物から帰ったときの荷物置き場としても便利です。

一方で、0.75間幅(約1.2m)の玄関だと、腰掛けを置くとスペースが窮屈になってしまいます。車椅子やシルバーカーを置くのも難しくなるので、老後を考えた玄関は1間幅がおすすめです。さらに、シューズクローク(靴や小物を収納するスペース)を設けておくと、玄関をすっきりさせられます。

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老後の間取りで後悔しやすいポイント⑤:玄関スロープのない設計

玄関スロープとは、地面から玄関までをつなぐ、なだらかな傾斜の通路です。階段のような段差がなく、足腰が弱くなった高齢者でも安心して上り下りができます。また、車椅子やベビーカーでの出入りにも便利な、バリアフリー機能です。

スロープをつくるにはある程度のスペースが必要で、玄関ポーチの高さが30cmの場合、スロープは約3.6mの長さとなります。幅は1mくらいが一般的なので、スロープをつくるには4m×1mほどのスペースが必要と考えましょう。

もし敷地に余裕がないと、後からスロープをつくるのは難しくなります。将来的に必要となるかもしれないと考える方は、あらかじめスペースを確保しておくと安心です。たとえば、玄関の隣に芝生の庭をつくっておくと、後からスロープに変更できます。リビング前をウッドデッキにしておいて、撤去後にスロープにすることも可能です。

老後の間取りで後悔しやすいポイント⑥:玄関からLDKが遠い設計

玄関とLDK(リビング・ダイニング・キッチン)の距離が遠いと、老後の生活が不便で危険を感じやすくなります。高齢になると、少し歩くだけでもよろけたり、転倒のリスクが高まるためです。若い頃には何ともない場所で転倒し、大ケガにつながる可能性があります。

玄関とLDKは、毎日の生活で何度も行き来する場所です。買い物から帰ってきて、玄関からキッチンへ荷物を運ぶ際に移動距離が長いと転倒のリスクが高まり、体への負担も大きくなります。

玄関とLDKの距離をできるだけ短くする間取りにすれば、老後の生活は安心で快適なものになるでしょう。一見小さな工夫に思えるかもしれませんが、老後の暮らしにとっては大きな違いを生む可能性があります。マイホームを建てる際には、将来を見据えた間取りの検討が大切です。

老後に適した設備選びのポイントと注意点

スマートロックの玄関ドア

老後も快適に暮らせる家づくりには、高齢者に優しい住宅設計を意識した間取りや設備選びが欠かせません。将来を見据えた注文住宅を建てるために、おすすめの設備や選び方のポイントを5つ紹介します。

手すりの設置

手すりは、老後の生活を安全に送るために欠かせない設備です。ただし、若いうちに設置しても老後に使いやすいとは限らない課題があるため、新築時に無理につける必要はありません。玄関や廊下、トイレのように将来手すりが必要になりそうな場所の壁に、下地補強を入れておくのがおすすめです。手すりを取り付ける際の工事が簡単になり、費用も抑えられます。

スマートキー付き玄関ドア

高齢になると、玄関に鍵を差し込んで開け閉めするのが大変に感じるケースも少なくありません。開閉の手間を省きたいときに便利なのが、スマートキー付き玄関ドアです。スマートフォンや専用タグをカバンに入れておけば、ドアのボタンを押すだけで解錠や施錠ができます。外出先から鍵がかかっているかスマホで確認できる機能もあるので、防犯面でも安心です。

見守り機能の配線準備

老後に備えて、以下のような見守り機能を導入できるよう準備しておくと、安心して暮らせます。

設備の設置にはホームコントローラーや配線が必要になる場合があるため、新築時にあらかじめ準備しておくと、入居後の工事がスムーズに進みます。

体に優しい冷暖房

家全体を効率良く冷暖房できる床下エアコンや小屋裏エアコンも老後の設備としておすすめします。冷気や暖気が直接当たらないので、体調を崩すリスクが少ないためです。全館空調システムと比べて費用を抑えられるメリットもあり、快適な室内環境を考える設備として検討してみましょう。

ユニバーサルデザインの設備

多くのメーカーが、ユニバーサルデザイン(UD)を採用した商品の販売を行っています。これらの商品は、年齢・性別・障害の有無・国籍を問わず、誰でも使いやすいように設計されており、高齢者にもおすすめです。老化で体力が衰えてきても無理なく使えるだけでなく、車椅子の方でも快適に利用できます。たとえば、座りながら使える洗面台やキッチンは、老後の暮らしを便利にする設備です。

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老後の暮らしに適した間取りは2階建てと平屋のどちらがいい?

家のキッチンでコーヒーをいれる老夫婦

老後のことを考えると、「2階建てよりも平屋の方がいいのでは?」と悩む方がいるかもしれません。2階建て住宅と平屋の違いやそれぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。

2階建てと平屋の特徴

次の表では、2階建て住宅と平屋の特徴をいくつかのポイントで比較しています。

2階建て住宅平屋
土地・狭い土地でも家を建てやすい
・都心部でも見つけやすい
・広い土地が必要
・郊外での土地探しが多くなる
費用・建築費が平屋より安い
・メンテナンス費用は高め
・建築費が高くなりがち
・メンテナンス費用は安い
生活動線・階段があると移動が大変・ワンフロアなので移動が楽
防犯性・階段があるためプライバシーを守りやすい
・防犯性の高い間取りが可能
・ワンフロアのため侵入されやすい
・周囲の目が気になることがある
災害時の安全性・浸水時には2階へ避難可能な一方、避難が遅れる可能性あり・水災には注意が必要なものの、避難はスムーズ

どちらを選ぶべき?

2階建て住宅にしても、平屋にしても、良い点と注意すべき点があります。現在の生活と老後の暮らしをイメージして、どのようなポイントを重要視したいか考えてみましょう。

老後の生活動線を優先するのであれば平屋がおすすめですし、シニア向けの間取りという観点からも平屋は高齢者に優しい選択肢といえます。一方で、土地の面積や建築費用を考慮すると2階建が魅力的です。

家づくりの際は、どちらがご自身のライフスタイルに合うかを検討すると後悔しません。

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まとめ

老後の快適な暮らしには、間取りや設備選びの工夫が欠かせません。高齢になると体力が落ち、子どもが巣立つと夫婦二人の生活になるため、将来を見据えた家づくりが重要です。今回紹介した間取りの例を参考に、安全で便利な住まいを検討しましょう。この記事を参考に、老後に安心して暮らせる家づくりを始めてみませんか?

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