注文住宅の屋根材選び方ガイド!おすすめの種類やメリット・デメリットを解説
注文住宅を建てるにあたって、屋根材の選び方は非常に重要です。屋根は家の外観として目立つ部分のため、デザインだけでなく機能性や耐久性も考慮して素材を選ぶ必要があります。
この記事では、屋根材の種類や特徴、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。選び方のポイントや注意点についても紹介するので、納得のいく屋根の選び方を知りたい方は最後までお読みください。
屋根の役割と構造
住宅の屋根は「家を守る」という役割が基本なものの、最近ではさまざまな役目を果たしています。そのため、注文住宅の屋根材は選び方が重要です。屋根の大まかな働きや造りを学んで、屋根材選びに活用しましょう。
主な役割
屋根にはさまざまな役割がある中で、主な働きは以下の5つです。
- 風雨や日差しを遮る
- 台風や大雨などの災害から家や家族を守る
- 家の外観をおしゃれにする
- 室温が上がりすぎないようにする
- 太陽光パネルを設置して電気をつくる
本来は、悪天候から住人を守るために屋根がありました。しかし、技術やデザインの進化に伴い、家をきれいに見せたり、室内で快適に過ごせるようになったりと役割の幅が広がっているというのが現状です。
太陽光発電が奨励されるようになった約20年前からは、太陽光パネルの設置場所としても活用されています。東京都をはじめ、新築住宅には太陽光発電の取りつけが義務化される自治体も出てきました
(参考:広報東京都「太陽光発電設置義務化に関する新たな制度が始まります」)
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木造住宅における基本構造
一般的な注文住宅は木造で、屋根はイラストのように複雑な構造になっています。主なパーツの名前と特徴は以下の通りです。
- 梁(はり):柱と柱の間に水平に設置される部材で、屋根の重みを支える
- 棟木(むなぎ):屋根の傾斜をつくるうえで、一番高いところに設置される重要な部材
- 母屋(もや):棟木と平行にならんでいる部材で、垂木を支える役割を果たす
- 垂木(たるき):屋根を傾けるための木材で、屋根の上から斜めに配置される
- 野地板(のじいた):垂木の上に置かれていて、屋根の材料をくっつける土台のような板
- 防水紙(ルーフィング):雨漏りを防ぐためのシートで、日光には弱い傾向がある
- 屋根材:瓦やスレートなどの種類があり、見た目を決める
- 大棟(おおむね):屋根の辺と辺が交わる一番高いところ
- 下り棟(くだりむね):大棟から下がるようについている棟
注文住宅で人気の屋根材4種類とメリット・デメリットを解説
屋根材の種類によって、注文住宅の外観のデザインや印象は大きく変化します。屋根の選び方は見た目だけでなく、耐久性や耐震性のような機能面や費用から検討しなければなりません。注文住宅で多く採用されている4つの屋根材について、メリットとデメリットを解説します。
瓦
粘土を高温で焼き固めた「陶器瓦」とも呼ばれる屋根材で、主なデザインの種類は以下の通りです。
- 和瓦(ワガワラ):和風の家に多く使われる波打った形の瓦
- 平瓦(ヒラガワラ):洋風の家にも似合う平らな瓦
- S型瓦:南欧風の雰囲気に仕上がる瓦
瓦はカラーバリエーションも広く、和風のいぶし銀や、落ち着きのある黒やダークブラウン、洋風の家に合うオレンジやグリーンなどから選べます。
瓦を屋根材に選ぶメリットとデメリットを見てみましょう。
メリット:耐久性が高い
瓦は非常に硬い素材で、年数が経ってもヒビ割れや色あせが発生しにくい特徴があります。最も長持ちする屋根材で、塗装のメンテナンスを50年以上しなくても大丈夫と言われるほどです。耐久性のある屋根を選べば、将来かかるメンテナンスコストを大幅に抑えられます。
メリット:豊富なデザイン性
他の屋根材と比べて、瓦はデザイン性が優れているのも特徴です。とくに釉薬瓦は、色の種類が豊富です。形も伝統的なものから、モダンなものまであります。選択肢が多く、注文住宅を建てる場所の景観になじみやすいのも魅力です。
デメリット:費用が高め
瓦は初期費用が高く、新築時のコストが懸念材料の1つです。ただし、非常に耐久性に優れた素材のため、他の屋根材と比べてメンテナンスの頻度は高くありません。トータルで考えると、初期費用は十分回収できます。
デメリット:耐震性への不安
瓦屋根は重く、地震の揺れに耐えられないというイメージがあるかもしれません。過去の震災で倒壊した瓦屋根の家は、建物自体の弱さや古さが原因です。国は昭和56年に建築基準法の改正をおこない、耐震基準を強化しています。2030年までに耐震性が不十分な部分を改善し耐震化を進める方針のため、今後建てられる住宅については心配いりません。
(参考:国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」)
スレート
セメントと繊維系の材料を混ぜて固めた屋根材で、瓦に比べて薄いのが特徴です。屋根がフラットな形状になり、シンプルでスッキリとした外観に仕上がります。
ストレートを屋根材に選ぶメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット:費用が安い
スレート本体以外の部材がほとんど不要なため、施工にかかる費用は抑えられるのが特徴です。他の屋根材と比べても初期費用が抑えられるため、注文住宅の新築コストを押さえたい方におすすめです。
メリット:豊富なカラーバリエーション
ストレートは屋根材として広く普及しているため、多くの種類が市場に出まわっています。さまざまな色の製品が展開され、幅広い色から好みの色が選択可能です。シックで落ち着いた色から、明るくてカラフルな色まで、注文住宅のデザインにピッタリな1色を見つけやすいでしょう。
デメリット:耐久性の低さ
ストレートの屋根は、約15年程度で表面塗装が劣化してしまいます。色あせやひび割れが生じ、進行すると雨水が浸入し雨漏りの原因です。雨水の影響で台風や地震のような自然災害によって脱落する危険性も生じます。事故防止のためにも、定期的な塗装メンテナンスが重要です。
デメリット:製品のグレードに注意が必要
同じスレートでも、紫外線に強い塗装を使用した製品は色あせや劣化を防げます。たとえば、「コロニアル遮熱グラッサ」は、30年間も紫外線から守るコーティングが施されているのというのが特徴です。色あせや劣化を抑えるだけでなく、遮熱効果も期待できます。
高耐久性のスレートを採用すれば、メンテナンスコストを大幅に削減可能です。スレートのグレードは住宅会社によって取扱いが異なるため、打合せの段階で確認しておきましょう。
ガルバリウム鋼板
耐久性向上のためにアルミや亜鉛、シリコンメッキが施された屋根材です。スレートよりもシンプルなデザインで、モダンな雰囲気の住宅に多く選ばれています。
ガルバリウム鋼板のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット:耐久性が高い
表面の塗装の塗り替えが約20年に1度とされ、一般的なスレートの屋根よりも長持ちします。塗装の下にメッキ層があり、素材自体も鋼板なので丈夫なのも強みです。初期費用はやや高めなものの、メンテナンスコストが抑えられる点を考慮すれば経済的な側面もあります。
メリット:軽量で地震の影響が少ない
今回紹介する屋根材の中で最も軽量のため、地震時の揺れにくさも抜群です。日本は地震大国で、いつどこで大きな地震があるかわかりません。揺れによって屋根が落ちる危険性の低いガルバリウム鋼板は、安全性を求める方におすすめします。
デメリット:サビの恐れがある
ガルバリウム鋼板はサビに強いアルミを使ったメッキが施されているため、他の金属に比べてサビにくい特性があります。ただし、経年劣化や深い傷によってメッキが剥がれると、サビが発生する原因です。ガルバリウム鋼板を選んだ場合は、住宅会社の推奨スケジュールに則って定期的な点検や再塗装などのメンテナンスをおこないましょう。
デメリット:葺き方(ふきかた)に違いがある
葺き方とは「屋根をおおう方法」を表し、ガルバリウム鋼板には「縦葺き」と「横葺き」があります。ガルバリウム鋼板を選ぶ際は、葺き方の違いを理解しておきましょう。
縦葺きは雨漏りのリスクが少ないものの、複雑な形の屋根には施工がむずかしいというデメリットがあります。横葺きは雨漏りの可能性がゼロではないものの、現場での加工がしやすく、さまざまな屋根の形に対応可能です。
アスファルトシングル
ガラス繊維の基材にアスファルトを染み込ませ、表面に色つきの石粒を吹き付けたシート状の屋根材です。アメリカで多く使われ、石粒のざらつきが特有の質感を生み出しています。
アスファルトシングルを屋根材に選ぶメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット:柔軟性が高い
アスファルトシングルは、さまざまな屋根に合う柔軟性の高さが魅力です。構造がシート状のため切断や曲げが比較的簡単で、複雑な屋根の形にも適応できます。注文住宅の屋根を自由にデザインしたい方や、他の材質が使えないと諦めていた方におすすめです。
メリット:傷つきにくい
アスファルトシングルは柔らかい素材のため、硬い物にぶつかっても割れにくいのが特徴です。表面も石粒でおおわれ、傷がつきにくいメリットもあります。とくに、表面に天然石を使用したアスファルトシングルは、石粒の色がそのまま屋根の色となります。天然石の特性で、年数が経っても色あせがほとんど起こりません。
デメリット:定期メンテナンスが重要
アスファルトシングルは厚さが薄いため、時間が経つと割れや接着の劣化が起こり、強風で剥がれやすくなります。また、表面の石粒には汚れやコケがつきやすいのも課題です。アスファルトシングルを選んだ場合、定期点検や掃除のようなメンテナンスが必要となります。
デメリット:施工実績が少ない
アスファルトシングルは日本でまだあまり使われておらず、施工実績が豊富な住宅会社は少ないのが現状です。ただし、材料は流通しているため、ほとんどの住宅会社で屋根材として選べます。工事品質や将来のメンテナンスを考えると、実績の少ない業者に頼むのは控えたほうが無難です。
屋根材の選び方で注意したいポイント
注文住宅の屋根を選ぶにあたって、メリット・デメリット以外に注目したいのが「価格」と「メンテナンス頻度」です。住宅購入には多額の費用がかかるものの、屋根の耐久性によってはランニングコストが抑えられるケースもあります。無理と無駄のない屋根材の選び方として、注意したいポイントを見てみましょう。
価格
屋根材の値段は材質によって異なり、面積が広いほど差が大きくなります。一般的な価格表を以下の表にまとめました。
屋根材 | 価格相場(㎡あたり) |
瓦 | 8,000〜12,000円 |
スレート | 4,500〜8,000円 |
ガルバリウム鋼板 | 6,000〜9,000円 |
アスファルトシングル | 5,000〜6,000円 |
あくまでも目安としての金額となるものの、瓦とストレートでは倍近い差があります。工事価格も踏まえると、価格を重視する場合は「スレート」か「ガルバリウム鋼板」がおすすめです。
メンテナンス頻度
屋根は紫外線や雨風にさらされる機会が多く、外装の中でも劣化が激しい傾向があります。メンテナンスをおこなわないと、色あせや外観の汚れが目立つだけではありません。割れや欠けが生じ、雨漏りや自然災害による落下の危険性もあります。トラブルを避けるためには、適切なタイミングでメンテナンスが不可欠です。瓦以外の屋根材では主に塗装がおこなわれ、目安の時期は次のようになります。
屋根材 | 塗装の目安時期 |
瓦 | ─ |
スレート | 15年 |
ガルバリウム鋼板 | 20年 |
アスファルトシングル | 15年 |
塗装は見た目を美しくするだけでなく、屋根を保護するためにも重要です。塗装メンテナンスを怠ると、劣化や損傷が加速します。最悪の場合、葺き替えが必要となり高額な費用がかかる可能性もあります。
まとめ:屋根材の比較ポイント一覧
注文住宅の屋根材別に、それぞれの特徴やメリット・デメリットを表にまとめました。
耐久性 | 地震時の揺れ | 汚れにくさ | コスト | |
瓦 | ◎ | △ | ◯ | △ |
スレート | △ | ◯ | ◯ | ◎ |
ガルバリウム鋼板 | ◯ | ◎ | ◯ | ◯ |
アスファルトシングル | △ | ◯ | △ | ◎ |
瓦は耐久性に優れているものの、地震の揺れに対する弱さやコストの高さが課題です。アスファルトシングルはコストが手頃な反面、日本での施工実績の少なさに不安が残ります。総合的に考えると、「スレート」で耐久性の高い製品を選ぶか、欠点がほとんどない「ガルバリウム鋼板」がおすすめです。
屋根材の価格や施工実績は住宅会社によっても異なるため、まずはお近くの工務店に相談してみましょう。