高気密高断熱住宅のデメリットと対策は?初期費用や健康リスクに対処する住まい
高気密高断熱住宅には、メリットだけでなくデメリットも存在します。デメリットを事前に理解しておくと、注文住宅の設計段階で適切な対策が可能です。
この記事では、高気密高断熱住宅の具体的なデメリットと解決策をくわしく解説します。高気密高断熱住宅で快適な住まいを手に入れたい方は、ぜひ参考にしてください。
高気密高断熱住宅の特徴
高気密高断熱住宅は地球温暖化防止の一環として注目され、省エネ生活の実現を主な目的としています。家の構造と住み心地の観点から、4つの特徴を紹介しましょう。
高い気密性
高気密高断熱住宅は、優れた気密性が特徴です。外気の侵入と室内の空気の漏れをなるべく防ぐ構造となっています。そのため、外の気温に室内の温度が影響されにくく、一年を通して快適に過ごせるのがメリットです。
優れた断熱性
高気密高断熱住宅では、壁や屋根、床などに断熱材が使用されています。住宅によっては断熱機能の高い窓やサッシを採用し、外部の温度が室内に伝わりにくい仕様です。高気密の住宅同様に、夏は涼しく、冬は暖かいのが特徴です。
エネルギー効率が良い
高気密高断熱住宅は室内の温度を一定に保てるため、冷暖房の消費エネルギーが少なく済みます。エネルギー効率が向上し、冷暖房にかかる光熱費が節約可能です。また、二酸化炭素の排出量を減らし、地球温暖化防止にも役立ちます。
快適な住環境が実現
高気密高断熱住宅では室内の温度や湿度が安定し、部屋ごとの温度差も大きくありません。気温の変化によって心臓や血管の疾患を引き起こすヒートショックの予防にもなります。騒音や空気の汚れを軽減する効果もあるため、小さなお子さんから高齢者のいるご家庭まで安心して暮らせるでしょう。
ただし、「高気密」と「高断熱」には明確な基準が存在しません。高気密高断熱住宅と謳っていても、ハウスメーカーや建築業者によって性能に差があるので注意が必要です。
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高気密高断熱住宅のデメリットと対策
高気密高断熱住宅には多くのメリットがあり、注文住宅を検討中の方にも非常に人気があります。しかし、気密性と断熱性の高さから生じるデメリットが存在するのも事実です。高気密高断熱住宅のデメリットと解消するためのアイデアを6つ紹介します。
初期費用が高い
高気密高断熱住宅を建てる際は、通常の住宅に比べて初期費用が高額なのがデメリットです。断熱性や気密性を高めるためには、高品質の断熱材や窓が欠かせません。施工時に求められる技術も高くなるため、工事費もかさみます。
しかし、高気密高断熱住宅はエネルギーコストを大幅に削減可能です。長期的な視野でランニングコストを計算すると、初期費用を回収できる可能性は十分にあります。光熱費などの毎月の出費を考慮しながら、高気密高断熱住宅を検討しましょう。
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一部の暖房器具が使えない
高気密高断熱住宅では、ガスや灯油を燃料とするファンヒーターやストーブなどの使用が制限されています。燃焼系の暖房器具は、一酸化炭素中毒の危険性があるためです。説明書には、高気密住宅でなくても一定時間ごとに窓を開けて換気するように記載されています。
ただし、窓を開けると室内の温かい空気が外に逃げるため、冷暖房の効果が損なわれるのがデメリットです。高気密高断熱住宅では省エネ効果を保つためにも、燃焼系の暖房機器を制限しています。代わりに省エネルギー効果の高いエアコンを導入すると、光熱費の節約が可能です。
室内が乾燥する
高気密高断熱住宅では、室内が乾燥しやすいという問題があります。乾燥した部屋で過ごすと、以下のようなリスクが高まります。
- 風邪をひきやすくなる:乾燥した空気ではウイルスが活発になり、風邪やインフルエンザが広がりやすい
- 肌荒れがおきやすい:乾燥した空気は皮膚の水分を奪い、肌の潤いが失われる
- 火災に注意: 室内が乾燥すると壁や床が燃えやすくなり、火災のリスクが高まる
快適な湿度は40〜60%とされており、冬季には加湿器の使用がおすすめです。室内干しで加湿する場合は、空気を循環させないと結露やカビの原因となってしまいます。最近では、外部の空気を調整する「熱交換型換気システム」の導入も人気です。
ハウスダストの発生
高気密高断熱住宅ではハウスダストが蓄積しやすく、アレルギーや健康に対するリスクを高める可能性があります。とくに、乳幼児がいるご家庭では注意が必要です。ハウスダストを軽減するためには、定期的な掃除が欠かせません。
さらに、部屋の空気を清潔に保てる仕組みも重要です。24時間換気システムを導入すれば、窓を閉めたままでも室内の空気を循環させられます。高気密高断熱住宅を建てる際は、室内の空気を強制的に入れ替える「第1種換気方式」の採用がおすすめです。
内部結露が発生しやすい
高気密高断熱住宅では、壁や床、天井部分で内部結露が発生しやすいというデメリットがあります。断熱材の隙間から屋外の冷たい空気が入り込み、室内の温かい空気と衝突するのが原因です。
内部結露は建物の損傷やカビの原因となる可能性が高いため、事前の対策がポイントとなります。内部結露を防ぐためには、断熱材の隙間を埋める施工が欠かせません。適切に工事するためには、腕のいい建設業者を選ぶ必要があります。信頼できる住宅会社や工務店を見つけることは、高品質な高気密高断熱住宅を建てるにあたって重要です。
部屋が暗くなる
高気密高断熱住宅では、気密性と断熱性を向上させるために窓の数や大きさが制限される場合もあります。窓の面積が狭くなる分、部屋が暗くなったり、閉塞感が出たりしてしまうのがデメリットです。
部屋の暗さは、照明の明るさや壁紙の色を工夫すれば解決できる場合もあります。しかし、解放感を得るのはむずかしいでしょう。断熱性の高い窓やサッシを選べば、大きさや数を気にせずに理想の間取りが実現可能です。初期費用はかかるものの、明るい部屋は毎日の生活を心地よくしてくれます。
高気密高断熱住宅に関するよくある質問
高気密高断熱住宅のメリットやデメリットを理解しても、注文住宅を建てる段階でさまざまな疑問が生じるものです。住宅は大きな買い物なので、できるだけ不安を最小限に抑えましょう。よくある質問を3つ例に挙げ、くわしく解説します。
初期費用の回収が不安
高気密高断熱住宅の初期費用は、一般的な住宅と比べて高額です。しかし、長期的な視点から見ると初期費用を回収できるだけでなく、大幅な節約にもつながります。電気代をはじめ、光熱費のランニングコストを大幅に削減できるのが主な理由です。
高気密高断熱住宅は室内の温度を快適に保ちやすく、冷暖房の使用を軽減できるメリットがあります。断熱性能の異なる住宅における年間の冷暖房費用の比較を以下の表にまとめました。
断熱性レベル | 年間の冷暖房費用 |
等級4(UA値0.87) | 136,704円 |
G3グレード(UA値0.26) | 35,005円 |
住宅の断熱性能を向上させるだけで、年間の冷暖房費用が約10万円も節約できるとわかります。30年間で300万円、50年間で500万円と計算できるので、初期費用は回収できる可能性が高いでしょう。
健康へのリスクが高そう
高気密高断熱住宅には、シックハウス症候群やアレルギーのリスクがあるのではないかという声があります。気密性が高いため、ハウスダストや有害物質が室内に閉じ込められる印象があるのでしょう。
実際には24時間換気が法律で義務づけられており、室内の空気は常に循環しています。窓を閉め切った状態でも換気ができるため、冷暖房の消費エネルギーは通常の住宅よりも効率的です。
ただし、床下に使用される防蟻剤や室内の建材に含まれる化学物質には注意が必要です。一般の住宅と同様に健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、安全性を考慮しなくてはなりません。建材の安全面を確保できれば、高気密高断熱住宅は従来の住宅よりも健康へのリスクが低い住環境を整えられます。
高気密高断熱住宅に必要性を感じない
お住まいの地域の気候によっては、気密性や断熱性に必要性を感じないかもしれません。しかし、高気密高断熱の住宅は、少ないエネルギーで快適な暮らしが実現できます。省エネは光熱費の節約に役立つだけでなく、地球温暖化防止にも貢献します。
政府は省エネ住宅の建設を奨励しており、将来的には注文住宅の気密性や断熱性の基準が引き上げられる見込みです。2030年以降はZEH水準(ゼロ・エネルギー・ハウス)の住宅でないと新築できなくなります。
(出典:国土交通省「家選びの基準変わります」)
ZEHの基準
- 強化外皮基準(UA値)が0.6~0.4以下
- 一次エネルギー(石油や天然ガスなど)消費量を20%以上削減
- 再生可能エネルギー(太陽光パネルなど)の導入
- 上記3つの取り組みによって、基準となる一次エネルギー消費量から100%以上削減
(参考:資源エネルギー庁「ZEH定義(改定版)<戸建住宅>」)
2030年以前であっても、注文住宅を建てる際はZEH水準を満たしておくのがおすすめです。将来的に家を売却する場合、気密性や断熱性の高い家ほど資産価値が上がると考えられます。
高気密高断熱住宅に強い工務店の選び方
高気密高断熱住宅には明確な基準が存在しないため、ハウスメーカーによって性能が異なります。注文住宅を建てる際は、信頼性の高い住宅会社や工務店を選ぶと安心です。住宅会社や工務店選びで失敗しないためのポイントを紹介しましょう。
断熱性能等級4以上の実績を持つ工務店
住宅の断熱性能を判断する基準として、「断熱等性能等級」があります。等級には1から4のランクが存在し、最高峰の断熱性を示すのが等級4です。断熱等性能等級より高い基準の「HEAT20」という指針もあり、グレードがG1からG3に分かれています。最も高い断熱性がG3となり、断熱等性能等級4よりも優れた性能です。
注文住宅の断熱性を重視する場合、断熱等性能等級が4以上の実績を持つ住宅会社や工務店を選びましょう。HEAT20のG3レベルに対応できる会社であれば、より高度な家づくりが期待できます。
施工実績が豊富
高気密高断熱住宅の建設は高度な技術を必要とするため、施工実績が豊富な業者を選ぶのが重要です。住宅会社や工務店の実績や評判は、カタログやホームページから確認できます。
たとえば、アイフルホーム三宅工務店では、HEAT20のG3レベル(UA 値0.26)の高気密高断熱住宅を多く手がけています。家中どこでも温度差が出にくく、快適な家づくりを安心して依頼できるでしょう。
数値を公開している
高気密高断熱住宅の性能を評価するためには、以下の3つの指標が役立ちます。
- Ua値(冷暖房に使った熱が外に逃げる割合)
- ηAC値(外からの日差しが室内に入る割合)
- C値(建物の隙間の少なさ)
カタログやホームページに上記の数値が掲載されていれば、住宅の性能を簡単に比較できて便利です。具体的な数値を公開している住宅会社や工務店は、自社の住宅性能に自信を持っているといえます。具体的な数値を公開しているかどうかで、住宅会社や工務店の信頼性を判断しましょう。
気密測定を行っている
住宅の断熱性は、断熱材の種類や壁の厚さで判断できます。ところが、気密性は建設後に専用の機器で測定しないと確認できません。住宅会社や工務店で、モデルハウスの数値を提示された場合は要注意です。
気密性は施工過程によって数値が変わるため、完成後に気密測定を実施する必要があります。引渡し前に全棟で気密測定を行っているかどうかは、信頼性を見極める重要なポイントです。住宅会社や工務店の担当者に、気密測定の有無やタイミングを確認してみましょう。
まとめ
高気密高断熱住宅にはいくつかのデメリットが存在するものの、設計や施工によって解決できます。ただし、デメリットを解消するためには高度な技術が必要です。高気密高断熱住宅を提供していると宣伝していても、技術や実績が追いついていない場合もあります。
性能の高い注文住宅を建てるためには、信頼できる住宅会社や工務店を選びましょう。カタログやホームページで数値や過去の施工実績を確認し、不明な点は担当者に質問するのがおすすめです。