外壁ALCのメリット・デメリットと注意点を知ろう! 注文住宅購入者向け情報
注文住宅の外壁にALCパネルを選ぶ人が増えています。優れた耐火性や耐久性があり、安心感のある家づくりができるためです。メリットが多くある一方で、注意すべきデメリットも存在します。
この記事では、ALCパネルの特徴や種類、他の外壁材との比較を解説します。外壁をデザインだけでなく機能性からも選びたい方にとって、参考になる情報が満載です。理想の住まいづくりに向けて、ALCパネルについて理解を深めましょう。
注文住宅購入者が知っておきたい外壁ALCの特徴
ALCとは、「Autoclaved Lightweight aerated Concrete」の略で、軽量気泡コンクリートです。主な原料は珪石・セメント・生石灰・アルミニウム粉末となっています。これらの素材を組み合わせ、高温高圧蒸気養生という独自の製造過程を経てつくられる素材です。
ALCを板状に成形したものを「ALCパネル」と呼び、外壁をはじめとする建材として広く利用されています。軽量で安全性が高いため、注文住宅でも人気です。
ALCの歴史
ALCは1920年代中頃、スウェーデンで誕生しました。1930年頃から工業生産が開始され、ドイツやオランダなど、北ヨーロッパを中心に広がります。ALCの製造技術が日本に導入されたのは1962年で、半世紀以上にわたり高い信頼性を保っています。ALCパネルは外壁材として長い歴史があり、安定した性能が期待できる建材の1つです。
(出典:ALC協会「ALCパネルとは」)
ALCパネルの種類
ALCパネルには、形状や厚さ、表面加工の違いによって種類があります。同じ素材でありながら異なる種類が存在し、デザインのバリエーションが豊富なのも特徴です。それぞれの種類について、簡単にわかりやすく解説しましょう。
形状の違い
- 一般パネル
- コーナーパネル
一般パネルは、外壁の側面に使用される平らなパネルです。コーナーパネルは、建物の角に用いるL字型のパネルとなっています。形状は異なるものの、強度や模様に違いはありません。
厚さの違い
- 薄型パネル
- 厚型パネル
薄型パネルは、主に鉄骨造や木造の建築物で使用されます。厚型パネルは、厚さ75mm以上で鉄骨造や鉄筋コンクリート造の耐火建築物に使用されるのが一般的です。
表面加工の違い
- 平パネル
- 意匠パネル
平パネルは、模様のないシンプルなパネルです。意匠パネルは、ラインやチェック模様などがデザインされています。
注文住宅におけるALC外壁5つのメリット
ALCパネルの特徴を知ると、注文住宅の外壁に向いていることがわかります。とくに注目したい、5つのメリットをわかりやすく解説しましょう。
耐火性が高い
ALCパネルは不燃材料のコンクリートが主原料のため、耐火構造の認定を受けている建材です。耐火性や防火性に優れているだけでなく、万が一火災が発生しても有害ガスや煙を発生させません。安全性の高さからも、外壁としておすすめです。
優れた耐久性
ALCパネルの中には、特殊防錆処理を施した鉄筋マットやメタルラス(スチール製の金網)が補強材として組み込まれています。外壁材として使用することで、十分な強度を発揮するのが特徴です。
断熱性が高い
ALCパネルは内部に細かい気泡が存在し、空気の層が形成されています。コンクリートに比べて熱伝導率が約1/10と低いため、注文住宅の断熱性を高められる素材です。外壁に用いれば、夏は涼しく、冬は暖かい住まいを実現できます。
(参考:ALC協会「Q&A -よくあるご質問 」)
遮音性に優れている
パネル内に多数の気泡が含まれているメリットとして、遮音性の高さもあります。気泡が音を吸収するため、体感として音の大きさが半減するほどです。車や電車の騒音が気になる地域に注文住宅を建築予定の場合、ALCパネルは理想的な外壁となります。
有害物質が含まれていない
ALCパネルは販売開始以来、有害物質である「アスベスト」や「ホルムアルデヒド」が含まれていません。シックハウス症候群のような健康被害を気にせずに暮らせ、注文住宅の外壁材としても安心です。
注文住宅におけるALC外壁3つのデメリット
外壁をALCパネルにするメリットをお伝えしたものの、デメリットも存在します。注文住宅を建てる際に考慮したほうがいい3つのポイントを紹介しましょう。
防水性が低い
ALCパネルは内部に微細な気泡が含まれているため、水に弱い傾向があります。パネル内への浸水はサビや膨張、ひび割れの原因です。外壁の落下や修復困難のトラブルが懸念されます。
ALC自体は気候の影響を受けにくく、耐久性が高い建材です。表面に防水塗装を施し、定期的なメンテナンスを繰り返せばリスクは最小限に抑えられます。
継ぎ目が多い
ALCパネルは、1枚当たりの幅が他の外壁材に比べて小さめなのが特徴です。同様に施工するサイディングボードと比較した場合、同じ面積を仕上げる際にALCパネルは継ぎ目が多くなります。
継ぎ目が多いとシーリングの劣化による雨漏りのリスクが高まります。また、メンテナンスにかかる費用が高くなる傾向もあるため、長持ちするシーリング材の検討がおすすめです。
他の外壁材と比べると価格が高い
ALCは、製造コストや機能性の高さから、他の外壁材よりも費用が高額になります。料金は種類やハウスメーカーによって異なるものの、値段のランキングは一般的に以下の通りです。
【外壁材の価格が安い順】
- 窯業系サイディング
- 金属系サイディング
- モルタル
- ALCパネル
ALCパネルは、窯業系や金属系サイディングの倍以上の価格となる場合もあります。表面塗装を施せば耐久性が高い外壁材のため、メンテナンス頻度や修繕費を考えると妥当かもしれません。注文住宅の外壁材を選ぶ際は、他の外壁材とも比較しながら慎重に考えましょう。
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注文住宅の外壁ALCは塗装メンテナンスがポイント
注文住宅の外壁にALCパネルを検討する場合、塗装メンテナンスが不可欠です。ALC本来の丈夫さを維持しながら、水に弱いという弱点を克服するためにも注意点を確認しておきましょう。
防水塗料で外壁表面を保護
ALC外壁の防水性は表面の塗装で補完されるため、仕上げに防水性の高い塗料を選ぶのがポイントです。水性のシリコン系・フッ素系・ウレタン系・アクリル系塗料が多く使われます。フッ素塗料やシリコン塗料は高価な反面、寿命が長く、塗り替え頻度が少ないのがメリットです。
ALCパネルの耐久性は塗料の性能によっても変わるため、工務店の担当者への相談をおすすめします。
シーリング材の点検も必要
ALCパネルの目地はシーリング材で埋め、雨水の侵入を防ぎます。シーリング材を十分に注入する必要があり、適正な厚みがないと早期劣化の原因です。シーリング材は経年劣化によって、ひび割れが生じるため、外壁の塗装時には点検が欠かせません。
補修が必要な場合はコーキングを塗り重ねたり、剥がしてから塗り直したりします。外壁の塗り替えと同時にシーリング材の状態を確認し、早めの補修を心がけましょう。
定期的なメンテナンスが欠かせない
ALCパネルを劣化させないためには、定期的な点検と適切なメンテナンスが重要です。不具合が生じる前にメンテナンスを行い、早めに対処します。5〜10年を目安に点検し、必要に応じて塗り替えを実施しましょう。ALCパネルが破損している場合は、専用の補修材を使用して修復する必要があります。
点検やメンテナンスは素人ではむずかしいので、専門家への依頼がおすすめです。
ALCパネルは他の外壁材と比べてどう違う?
注文住宅の外壁材はACLパネルの他にも以下の種類があります。
- 窯業系サイディング
- 金属系サイディング
- 木質系サイディング
- モルタル
- タイル
コストや耐久性など複数の観点から比較し、注文住宅の外壁にACLパネルが適しているか検討しましょう。
コストの比較
外壁の比較ポイント1つ目は、コストです。材料費と施工費を合わせた大まかな費用相場を表にまとめました。
外壁材の価格相場(材料費+施工費)
窯業系サイディング | 8,000円〜 |
金属系サイディング | 10,000円〜 |
木質系サイディング | 14,000円〜 |
モルタル | 15,000円〜 |
タイル | 24,000円〜 |
ALC | 16,000円〜 |
広く普及している窯業系サイディングや、低価格なモルタルはコストを抑えたい方におすすめです。
ただし、注文住宅を扱う工務店によって料金は大きく異なります。事前に以下の点を確認しておくと安心です。
- 標準で選べる外壁材はどれか
- オプションの外壁はいくらプラスになるのか
上記の価格相場表は目安に過ぎませんので、各住宅会社や工務店に確認しながら外壁材を選びましょう。
耐久性の比較
コストの次に気になるのは、外壁の耐久性です。外壁材の耐久性を大まかに比較すると、以下のようになります。
窯業系サイディング | △ |
金属系サイディング | ◯ |
木質系サイディング | △ |
モルタル | ◯ |
タイル | ◎ |
ALC | ◯ |
いくら丈夫な素材であっても、メンテナンスを怠れば劣化は進みます。耐久性の比較は、外壁材自体の耐久性だけではありません。表面塗装やコーティングが持続できる期間やメンテナンス費用の確認が重要です。
初期費用が安くても、「塗装サイクルが短い」「メンテナンス費用が高額」という場合は、割高な外壁材とも考えられます。
デザイン性の比較
外壁比較の3つ目のポイントは、デザイン性です。外壁デザインは基本的にご自身の好みによります。選択肢の多さやデザインの特徴に着目すると失敗しません。
バリエーションが豊富
- 窯業系サイディング
- 金属系サイディング
窯業系サイディングは普及率も高く、さまざまなデザインから選べます。金属系サイディングは人気が高まっているため、デザインの種類が増加傾向です。
バリエーションが少なめ
- タイル
- 木製サイディング
素材自体がオリジナリティの高い見た目や質感のため、デザインのバリエーションを必要としない流れがあります。外壁材が好みに合う場合、迷わず決められるのも魅力です。
継ぎ目が目立つ
- 窯業系サイディング
パネルを貼って仕上げる外壁材の場合、継ぎ目を埋めるシーリングは目立つ恐れがあります。窯業系サイディングは継ぎ目の幅が広いため、継ぎ目は目立ちやすいのが課題です。年数が経つにつれて、汚れや日焼けによる変色が気になるかもしれません。
継ぎ目が目立たない
- 塗り壁
塗り壁は、継ぎ目自体がほぼできません。すっきりとした見た目ながら、味わいのある質感です。機能性とデザイン性を兼ね備え、長く住んでも飽きがこないと注文住宅の外壁として人気があります。
住宅会社や工務店に施工実例がある場合は、実際に見比べて検討するのも1つの方法です。
耐火性の比較
外壁の比較ポイントの4つ目は、耐火性です。国が不燃材料として認定しているのは以下の通りです。
- コンクリート
- モルタル
- しっくい
- 金属板
- 窯業系サイディング(条件あり)など
(参考:住宅生産団体連合会「外壁に不燃材料等を張る場合の防火上の取扱いについて 解説」)
上記の素材を使用した外壁材は、耐火性に優れています。しかし、住宅を建てる際に必要な耐火性能は、建築地域・建物の面積・階数・構造・用途など複数の条件から判断される仕組みです。
耐火性能が高い外壁材を選びたい場合は、窯業系サイディングや塗り壁、ALCがおすすめなものの初期費用は高い傾向があります。耐火性能だけを考えず、注文住宅を建てる地域や条件を考慮した上で適したものを選びましょう。
比較一覧表
注文住宅の外壁材を選ぶ際のポイントを表にまとめました。独自の評価によるものなので、一般的な傾向として参考にしてください。
外壁材の比較一覧
コスト | 耐久性 | 意匠性 | 耐火性 | |
窯業系サイディング | ◎ | △ | △ | ◎ |
金属系サイディング | ◯ | ◯ | ◯ | ◎ |
木質系サイディング | △◯ | △ | ◎ | △ |
モルタル | △◎ | ◯ | ◎ | ◯ |
タイル | ✕ | ◎ | ◯ | ◯ |
ALC | △ | ◯ | △ | ◎ |
△であってもご自身のニーズに合う可能性は十分にあるため、劣るというわけではありません。とくにコストやデザイン性に関しては、個人差が生じやすい項目となります。
まとめ
ALCパネルを外壁に選ぶ理由は、優れた耐火性や耐久性があるからです。注文住宅を終の棲家と考える人も多く、安全性の高さは重要なポイントになります。お子さんのいる家庭では有害物質や遮音性も気になるでしょう。すべてをクリアするALCは、初期費用の高さを考えても十分価値があります。
注文住宅の外壁材は種類が豊富なため、専門家に相談しながら選ぶのがおすすめです。理想のデザインや機能をまとめて、住宅会社や工務店に足を運んでみましょう。