省エネ基準住宅の魅力と2025年以降の義務化の影響をわかりやすく解説
省エネ基準に適合した住宅は、高い気密性と断熱性を有しています。一年を通じて室温を快適に保て、冷暖房費用を大幅に削減できるのが魅力です。
今回は、新築注文住宅を検討中の方に向けて、省エネ基準について解説します。メリットやデメリット、補助金制度、住宅ローン控除に関する情報などが満載です。
2025年からは、新築住宅において省エネ基準が必須条件となります。今後の参考になる記事となっていますので、ぜひお読みください。
省エネ基準住宅の定義と特徴
省エネ基準の住宅は、家庭内のエネルギー消費量を削減できます。通常の住宅と比較して、断熱性や気密性が優れているためです。冬は室内の暖かい空気が逃げにくく、夏は外の熱が室内に入りにくい特性があります。
日本の住宅では約30%が冷暖房にエネルギーを消費しているものの、省エネ基準を満たした住宅では少ないエネルギーでより快適に過ごせるのが魅力です。省エネ住宅はエネルギー消費の削減だけでなく、結露防止や室内の寒暖差を最小限に抑える役割も果たします。
省エネ住宅は環境保護に貢献できるうえに、住む人が快適に生活できるのが特徴です。
(参考:資源エネルギー庁「省エネ住宅」)
省エネ基準住宅が注目されている理由
2025年以降、新築住宅の要件として省エネ基準の義務化が決定しました。背景として、カーボンニュートラル(脱炭素社会)実現への取り組みが影響しています。政府は2050年までに温室効果ガスの排出ゼロを目指し、二酸化炭素などの排出量削減を推進しています。
気候変動問題は、日本だけでなく世界的な課題です。2015年にはパリ協定が採択され「平均気温上昇を1.5℃に抑える」という長期的な目標が決定しました。現在、120以上の国や地域が「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けて取り組んでいます。
(参考:環境省「カーボンニュートラルとは」)
省エネ基準住宅の3大性能
省エネ基準住宅には、「断熱性」「日射遮蔽性」「気密性」という3つの重要な性能があります。3つの性能を組み合わせると、住宅のエネルギー使用量を効率的に削減可能です。
断熱性(UA値)
断熱性は、熱を伝えにくくして室内の温度を快適に保つ性能です。高い断熱性の住宅では、一年中室温が安定します。「UA値(外皮平均熱貫流率)」が低いほど省エネ性能が高い住宅です。
日射遮蔽性(ηAC値)
日射遮蔽性は、窓からの日差しや窓以外の部分から伝わる熱を遮る性能です。高い日射遮蔽性の住宅では、日差しによる室内温度の上昇を抑えられます。「ηAC値」が低いほど省エネ性能が高い住宅です。
気密性(C値)
気密性は、室内外の空気の流れを抑制する性能です。住宅の隙間を少なくし、空気の流れを制限することで熱が逃げるのを防ぎます。気密性を示す数値は「C値」で、低い数値ほど気密性が高い住宅です。気密性が高すぎると空気の循環が悪くなる可能性があるため、換気システムの導入も必要となります。
これらの数値は、省エネ住宅の性能を比較する際に役立ちます。住宅会社や工務店のホームページに公開されている数値を参考にすれば、どの程度の家を建てられるか検討しやすくなるでしょう。
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高気密高断熱住宅の基準とは?家を建てる前に知っておきたいポイントと省エネ住宅の将来
省エネ基準住宅のメリット・デメリット
省エネ基準の住宅には、メリットとデメリットが存在します。注文住宅を建てる際には、どちらも十分に理解したうえで検討すると失敗しません。代表的なメリットとデメリットを紹介します。
メリット
光熱費が削減できる
省エネ基準住宅は、室温が外の気温に左右されにくいのが特徴です。室温が一定に保たれるため、冷暖房の使用量が少なく済みます。エアコンの温度設定やエネルギー消費量が効率的になり、電気代を大幅に削減可能です。高い保温保冷機能により、「魔法瓶のような家」とも呼ばれています。
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快適で健康にもいい
省エネ基準住宅は家全体の温度が安定し、部屋ごとの温度差が小さくなります。寒冷地域でも快適に過ごせ、ヒートショックによる健康被害が軽減できるのも魅力です。高い断熱性と気密性は結露を防ぎ、アレルギー源となるカビやダニの発生を抑制します。小さなお子さんから高齢者まで安心して暮らせるのも魅力の1つです。
住宅が長持ちする
省エネ基準住宅は断熱性と気密性の高さから結露を予防しやすく、壁や天井、木材へのダメージを軽減します。断熱性や気密性は家を建てるタイミングで対策を講じるのが最適です。省エネ基準に準じて注文住宅を建てれば、施工時に対策を講じられます。結露を防げば、住宅の耐久性が向上しメンテナンスの費用を減らせるでしょう。
デメリット
初期費用が高い
一般住宅と比較して、省エネ基準適合住宅の初期費用は高額となる傾向があります。高品質な断熱材や気密性を高める工事が必要なためです。ただし、省エネ性能が高いため、光熱費をはじめとしたランニングコストは大幅に節約できます。長期的に考えると、経済的でお得な場合が少なくありません。
工務店選びがむずかしい
省エネ住宅は地域ごとに適合基準が異なるため、適切な業者選びが重要です。地元密着型の工務店なら、気候や景観に合った家づくりを依頼できます。工務店を探す際は、過去の実績を参考にしましょう。ホームページやカタログにUA値やC値を公開している場合は、信頼性が高いと判断できます。
2025年以降の住宅は省エネ基準適合が義務化
2025年以降、住宅の新築において省エネ基準の適合が義務化されます。国の方針として現行の省エネ基準を満たしていないと家を建てられないというものです。今後は水準が引き上げられることが予想されるため、これから注文住宅を建てる方が注目すべきポイントについて解説します。
省エネ住宅の基準
省エネ住宅の性能評価には、「外皮基準」と「一次エネルギー消費量基準」の2つが使われています。どちらも住宅のエネルギー効率を示す重要な指標です。
外皮基準
外皮とは、家全体を覆う以下の部分を指します。
- 屋根
- 壁
- 窓
- 床
- 床下など
外皮の性能は、「外皮平均熱貫流率(UA値)」と「冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)」の2つで評価され、数値が低いほど省エネ性能が高まります。
日本では地域によって気象条件が異なるため、地域を8つに分けて基準を設けています。兵庫県は、区分5と6に該当する地域がほとんどです。2025年に省エネ基準が義務化されると、最低基準ラインは以下のようになります。
兵庫県の場合
地域の区分 | 5 | 6 |
外皮平均熱貫流率(UA値) | 0.87 | 0.87 |
冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値) | 3.0 | 2.8 |
一次エネルギー消費量基準
一次エネルギー消費量基準は、「BEI(Building Energy Index)」と呼ばれる指標で、主に以下の消費エネルギーが対象です。
- 暖房設備
- 冷房設備
- 換気設備
- 照明設備
- 給湯設備
- 家電・調理など
設計段階で試算されるエネルギー消費量を、地域や用途、使用条件に基づく「基準一次エネルギー消費量」と割り算して算出します。2025年以降は、BEIが1.0以下でないと住宅の新築が許可されません。
(参考:国土交通省「省エネ基準の概要」)
2030年からはZEH水準がスタンダードに
経済産業省がZEH(Net Zero Energy House)の普及を進めた結果、2020年にはハウスメーカーが扱う新築住宅の約56%がZEHとなりました。今後も普及は進み、2023年にはZEH水準が新築住宅の最低ラインとなる予定です。
兵庫県におけるZEH水準は、以下のようになります。
外皮基準(兵庫県)
地域の区分 | 5 | 6 |
外皮平均熱貫流率(UA値) | 0.6以下 | 0.6以下 |
冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値) | 3.0 | 2.8 |
2025年の省エネ基準(UA値0.87)から0.2以上引き下げられ、注文住宅を建てる際にはより高い断熱性が必要です。
ZEH水準の一次エネルギー消費量基準は、BEI0.8以下となります。現行の省エネ水準の1.0以下を下回る数値で、太陽光発電などの創エネを考慮せずに現行の基準から20%減らさなければなりません。断熱性だけでなく、気密性や日射遮蔽性が求められると理解できます。
(参考:国土交通省「住宅性能表示制度の省エネ上位等級の創設」)
早めの対応が資産価値に反映
2025年の省エネ基準適合の義務化に続き、2030年には新築住宅の基準がZEH水準に引き上げられることが決定しました。今後も水準の引き上げが予想され、太陽光パネル付きの住宅がスタンダードになる可能性も十分あり得ます。
注文住宅を建てる際には、資産価値を考慮に入れた設計がおすすめです。省エネ性能の低い住宅は住宅ローン控除や補助金の対象から外れるだけでなく、リフォームが必要となる場合もあります。万が一売却しようとしても、買い手がつかないリスクもあります。
注文住宅の新築を検討している方は、2030年のZEH水準を基準に計画しておくと安心です。
(参考:国土交通省「家選びの基準変わります」)
(参考:国土交通省「『待って!家選びの基準変わります』漫画」)
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省エネ基準住宅なら補助金や減税制度が利用できる
政府が省エネ住宅を推奨していることもあり、国や自治体でさまざまな支援制度を用意しています。補助金制度は年度ごとに募集が行われ、2024年度は以下の募集が決定しています。(2023年11月現在)
子育てエコホーム支援事業
物価高騰の影響を受けやすい子育て世帯(18歳未満の子がいる)や、若者夫婦世帯(いずれかが39歳以下)に向けて、高い省エネ性能を持つ新築住宅の取得を支援する制度です。省エネへの投資をしやすくし、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指します。
補助対象 | 子育て世帯、若者夫婦世帯による住宅の新築 |
対象住宅 補助額 | ・長期優良住宅:100万円/戸 ・ZEH住宅: 80万円/戸 ※ 対象となる住宅の延べ面積は、50㎡以上240㎡以下とし、一部の特定の区域は半額 |
注意事項 | ※地域や対象条件によって補助額が異なるため、具体的な条件については詳細を要確認 |
上記に加えて、太陽光発電システムや給湯器など特定の機器や設備にも補助金や助成金が給付されます。国や各自治体のホームページを確認し、対象となる補助金制度を検討しましょう。
住宅ローン控除
住宅ローン控除は、毎年ローン残額の0.7%を所得税(一部は翌年の住民税)から最大13年間控除できる制度です。控除を受けるにはさまざまな条件があり、2024年からは借入限度額や申請要件に変更があります。
2024年以降の住宅ローン控除の借入限度額(控除率0.7%・控除期間13年間)
長期優良住宅・低炭素住宅 | 4,500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 |
省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 |
その他の住宅 | 0円 |
必要となる証明書は「建設住宅性能評価書の写し」または「住宅省エネルギー性能証明書」のいずれかです。専門機関や建築士によって作成されるため、注文住宅を建てる際は証明書が発行できる工務店を選ぶ必要があります。
補助金制度を利用する際の注意点
注文住宅を建てるにあたり、補助金制度は大きな支援となります。確実に利用するためにも、以下のポイントに注意が必要です。
補助金の予算制限
国や自治体の補助金は年間の予算が限られています。申請者が多い場合、予算を超えた時点で申請を打ち切られるケースがほとんどです。補助金を確実に受けたい方は、できるだけ早めに手続きを進めましょう。
申請手続きは登録事業者に限られる
補助金や助成金の中には、住宅購入者ではなく住宅会社や工務店による申請が必要なものもあります。申請できるのは「登録事業者」に限定されるので、契約する業者が対象となるか確認しましょう。
適用条件に注意
補助金制度の多くは、物件の用途や面積、対象となる人の年齢に要件があります。申請について不明な点は、事業者および住宅会社や工務店スタッフに相談するのがおすすめです。
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まとめ
2025年以降、新築住宅は省エネ基準に適合している必要があります。省エネ住宅の普及は今後も進み、2030年には現行の基準を上回るZEH水準が新築住宅の最低要件となる予定です。高い省エネ性能を持つ住宅は気密性や断熱性にも優れ、地球にも人間にもやさしい暮らしを実現できます。
注文住宅を検討中の方は、省エネ住宅の建築実績が豊富な工務店に相談するのがおすすめです。最新の省エネ技術を取り入れた家を建てられるだけでなく、補助金や住宅ローン控除についてもサポートしてくれるでしょう。