注文住宅の外壁を塗り壁にするメリット・デメリットとは?種類やデザインの魅力も解説
注文住宅において、外壁に塗り壁を採用したおしゃれなデザインが注目を浴びています。伝統的な外壁である塗り壁は、その多彩な魅力が人気の理由です。本記事では、注文住宅の外壁に塗り壁を採用するメリットとデメリットに加えて、塗り壁の種類やデザインについてくわく紹介します。
塗り壁とは?自然素材の魅力が注文住宅にもおすすめ
塗り壁とは、職人の手で仕上げる自然素材の壁材です。手作業ならではの風合いや高いデザイン性が特徴で、日本では古くから外壁として使われてきました。洋風の住宅が増えた現在では、注文住宅の外壁はサイディングが主流です。しかし、塗り壁は自然素材を使用し、独自の雰囲気を出せる点からも根強い人気があります。
塗り壁は、モルタルで外壁の下地をつくってから職人が手塗りで仕上げるのが一般的です。土や石灰のような天然素材が使用され、環境にやさしいという特徴もあります。
最近では砂をベースにした新しい種類も登場し、より使いやすい仕様に日々進化中です。色が豊富で丈夫なため、注文住宅の外壁としても活用範囲は幅広くなっています。塗装方法も改良され、コテで塗るだけでなく、スプレーで吹き付ける手法も出てきました。
塗り壁は職人の手作業が多く必要だったものの、時代に合わせた変化で注文住宅にも採り入れやすい壁材となっています。
注文住宅の外壁に適した塗り壁の種類と特徴
塗り壁にはさまざまな種類があり、注文住宅に最適な外壁を選ぶためにもそれぞれの特徴を理解しておく必要があります。外壁に主に使用されている3つの種類について紹介しましょう。
土壁
土壁は伝統的な壁材で、調湿効果に優れています。断熱性も高く、一年を通して快適な室温を維持できるのが魅力です。自然素材でできているため、防火性が高く安全面でも信頼できます。ただし、施工には時間がかかり、専門の職人を探さなくてはなりません。費用が高くなる傾向があるだけでなく、経年劣化により下地が見えてくる可能性も考えられます。
漆喰
漆喰は石灰を主成分とした自然素材の塗り壁材で、独特の白さが特徴です。ヨーロッパ風の外壁として需要があるだけでなく、墨汁を使用して黒く仕上げる「黒漆喰」も人気があります。殺菌性も高いため、カビの発生が少ないのもメリットです。防火性や防音性も高く、住み心地にも影響を与える魅力が多く見受けられます。ただし、施工には熟練の技術が必要です。
ジョリパット
ジョリパットはアクリル樹脂を主成分とした壁材で、注文住宅の外壁に最も多く採用されています。100種類以上もの多彩なカラーや仕上げの模様から自由に外観を選べ、雨や紫外線に対する耐久性が高いのも特徴です。防音性や耐火性の機能性が備わっているにもかかわらず、比較的費用が抑えられます。ただし、色や模様によっては汚れが目立ちやすく、冬の施工では白くなりやすい傾向もあるので注意が必要です。
仕上げのデザイン
塗り壁の仕上げ方法には種類があり、同じ素材でも仕上がりのデザインは異なります。代表的な4種類を紹介しましょう。
コテ波
コテを使用して波模様を外壁に施す技法で、立体感が特徴です。光の反射によって陰影が形成され、美しさとオリジナリティのある外壁に仕上がります。主張が強すぎず、多くの人に人気のデザインです。
ハケ引き
ブラシやハケを用いて模様を引く技法で、自然な風合いと和のテイストが魅力となります。上品で柔らかな印象に仕上がるので、注文住宅の外壁としても人気です。
扇
外壁の表面を扇状に仕上げる技法で、高級感や個性的なデザインを好む人に向いています。施工には高度な技術が必要なため、腕のいい左官職人への依頼が欠かせません。
スタッコ
モルタルを使用して滑らかな仕上げを行う技法で、洗練された美しい光沢が魅力です。ヨーロッパの石造建築の壁を思わせる仕上がりとなり、外国をモチーフとした注文住宅でも人気があります。
塗り壁を外壁に選ぶ5つのメリット
外壁に塗り壁を選ぶメリットは多く、注文住宅を考えている人にとっても魅力的です。主なメリットとして、具体的に5つ紹介します。
オリジナル性の高いデザイン
職人の手によって仕上げられた塗り壁は、1つとして同じデザインのものはありません。コテや刷毛によって、より自分好みの外観に仕上げられるでしょう。ヨーロピアンテイストやプロヴァンス風のデザインから和モダンな雰囲気まで、塗り壁はさまざまなスタイルに適用できます。家族の手形やビー玉を組み込みたいという要望も、担当者に相談するのがおすすめです。
自然な風合いを楽しめる
塗り壁は天然素材を主成分とするため、ナチュラルな仕上がりを楽しめるのが魅力です。サイディングやタイルなどの壁材とは異なり、自然の風合いが美しく感じられる特徴があります。職人の手作業によって仕上げられるため、機械的な仕上がりとはなりません。外壁の手触りや雰囲気が建物ごとに異なり、手仕事ならではの温かみがあります。仕上がりは職人の腕に左右される分、業者の選びは慎重に行いましょう。
豊富なカラーバリエーション
塗り壁というと漆喰の白色が思い浮かぶかもしれませんが、実際には多彩な色から選択可能です。とくにジョリパットには、150色以上ものバリエーションがあります。注文住宅のイメージに合った色を見つけやすく、思い通りの外観を実現できるでしょう。なお、外壁の色を選ぶ際には、屋外でカラーサンプルを確認するのがおすすめです。室内で見るよりも、より仕上がりに近い色味を想像しやすくなります。
高い防火性
塗り壁の下地に使用されるモルタルは、セメントや砂などの燃えにくい素材です。塗り壁の塗料も自然素材をベースにしているため、燃えにくい特徴があります。中でも漆喰は、国で不燃材料として認められているほどの防火性です。戸建て住宅は木材を多く使用する分、火災への不安が伴います。しかし、塗り壁には高い防火性があるので、注文住宅の安全性を向上させてくれる外壁です。
(参考:国土交通省「不燃材料を定める件」)
シーリング補修不要
多くの外壁材はパネルを使用しているため、境目にシーリングが施されています。雨水の侵入を防ぐために欠かせないものの、時間と共に劣化してしまうのが難点です。経年劣化したシーリング部分は補修が必要なため、定期的なメンテナンスが欠かせません。しかし、塗り壁には継ぎ目がないので、シーリング補修は不要です。長期的に考えると、メンテナンス費用の節約に役立ちます。
塗り壁を外壁に選ぶ際のデメリット
塗り壁を外壁に採り入れるメリットについてお伝えしたものの、デメリットにも注意が必要です。注文住宅の外壁を選ぶにあたって、デメリットは慎重に考慮すべきポイントです。事前に、塗り壁を外壁に選ぶデメリットを正しく理解しておきましょう。
ひび割れのリスク
塗り壁の下地となるモルタルには水分が含まれているため、時間と共に乾燥して収縮する性質があります。モルタルの収縮が、外壁の微細なひび割れの主な要因です。また、モルタル自体の硬度が低いため、地震の揺れもひび割れの一因となります。ひび割れは完全に防止できないものの、外壁の耐久性には大きな影響を及ぼしません。ひび割れの目立たないデザインを選べば、メンテナンスの頻度を過度に上げずに済むでしょう。
汚れがつきやすい
塗り壁の表面は粗いため、埃や汚れが付着しやすい性質があります。外壁の表面に凹凸があるので、雨水によるシミや苔の発生リスクが高いのもデメリットです。ただし、他の外壁材でも同じ課題はあり、親水性の高い塗料やコーティングで対策できます。施工時に適切にコーティングすれば、雨水による汚れを簡単に洗い流せて便利です。塗り壁の場合、高圧洗浄機は外壁損傷の原因となる恐れがあるので控えましょう。
工期が長く費用が高い
漆喰や土塗りは充分に乾燥させる必要があるため、施工には時間がかかります。工事期間が長くなる分、施工費用も高くなってしまうのが難点です。また、塗り替えや定期的なメンテナンスにかかる費用も、他の外壁材と比べて高額になる傾向があります。施工した職人の能力によって耐久性が変わるため、注文住宅に採用する場合は業者選びを慎重に行いましょう。メンテナンスの頻度減少や劣化を遅らせ、住宅維持費の節約につながります。
職人の腕に左右される
サイディングのように多くの外壁材は工場で製造され、パネル状のものを現場で取り付けるのが一般的です。材質や施工が安定し、仕上がりに大きな差が出ません。塗り壁の場合、下地のモルタルから人の手で配合されます。コテや刷毛による仕上げ作業には、経験とセンスが必要不可欠です。高品質な仕上がりを求めるほど、優れた人材の確保と高い費用が重要なポイントとなってきます。
塗り壁のメンテナンスについて
外壁は紫外線や雨風にさらされるため、時間が経つにつれて汚れや劣化が目立ちます。塗り壁は汚れやひび割れが目立ちやすいため、定期的なメンテナンスが欠かせません。小さな汚れはDIYで対処できる場合もありますが、全体的な汚れやひび割れは専門家への依頼が必要です。
自分でメンテナンスする方法
鳥のフンや排気ガスなど、外壁の汚れは頻繁につきやすくなっています。簡単な汚れであれば、自分で掃除できます。高圧洗浄機のように水圧を使用して汚れを落とすと、塗り壁は損傷する恐れがあるので控えましょう。柔らかいスポンジで軽くこする程度にし、洗剤もメーカーの指示に従って使用します。汚れによっては、サンドペーパーで擦れば落ちるケースも少なくありません。ひび割れの修理方法もありますが、安全面を考慮して業者に依頼するのがおすすめです。
メンテナンスの頻度と費用
塗り壁は耐久性が高い外壁材の1つで、漆喰に関しては耐用年数が100年以上ともいわれています。時間が経つにつれて硬く丈夫になる性質で、耐久性が向上していくためです。しかし、長持ちさせるためには、10〜15年ごとに適切なメンテナンスを行う必要があります。
塗り替えの費用は高額で、1棟あたり100万円以上のケースも少なくありません。他の外壁材よりも塗り直しの手間や技術が必要となるため、施工時点でひび割れの起きにくい材料を選ぶのも1つの方法です。メンテナンスに関しても職人の腕によって仕上がりに差が出るため、注文住宅購入後も相談できるハウスメーカーや工務店をおすすめします。
塗り壁の外壁業者を選ぶポイント
注文住宅の外壁を塗り壁にする場合、住宅会社や工務店選びが重要です。失敗しないために注意したい3つのポイントを紹介します。
過去の実績
塗り壁の施工には高度な技術が必要なため、施工実績の確認がおすすめです。検討中の住宅会社や工務店があれば、ホームページで過去の施工実績をチェックして見ましょう。技術的な面だけでなく、デザインの傾向も把握できます。ただし、Web上の情報を信じすぎるのは危険なため、参考程度にとどめておくのも大切です。気になる業者には足を運んで、担当者から話を聞くとネットには載っていない情報が手に入ります。
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施工のスケジュールや内容
外壁工事の工程を省略してしまうと、仕上がりに大きな影響が出るので注意が必要です。塗り壁の外壁工事のスケジュールや作業内容を業者に問い合わせ、必要な作業が含まれているかを確認しましょう。乾燥期間や塗りの回数、ひび割れ対策は耐久性にもかかわるポイントです。疑問や不安を担当者に質問すれば、丁寧な説明をしてくれるかどうかで信頼度を判断できます。
打合せの丁寧さ
外壁は注文住宅全体の印象を決めるため、施工前の打合せは重要な作業です。カラーサンプルは小さく、家全体をイメージできない可能性があります。デザインの打合せの際に、どれだけ具体的に説明してもらえるかも重要なポイントです。初心者にもわかりやすいコミュニケーションがとれ、専門家としてのアドバイスももらえるようであれば安心して依頼できます。信頼できる業者を見つけるためにも、積極的に相談してみましょう。
まとめ
塗り壁の魅力は、自然素材ならではの安全性と温かみのある風合いです。豊富なカラーと模様から選べ、自由度の高い外壁が実現できるメリットもあります。費用の高さがネックとなりがちなものの、ジョリパッドは耐久性が高いうえに費用は抑えて施工可能です。そのため、注文住宅の外壁にも採用しやすいと人気があります。外壁選びは、メンテナンスの頻度と修繕費用についても考慮が必要です。注文住宅購入後についても相談できる住宅会社や工務店を見つけ、安心して家づくりに臨みましょう。