セントラルヒーティングは一戸建て住宅の暖房に最適?仕組みや種類を徹底解説
セントラルヒーティングで暖かいリビングでくつろぐ家族

家づくりコラム

セントラルヒーティングは一戸建て住宅の暖房に最適?仕組みや種類を徹底解説

セントラルヒーティングで暖かいリビングでくつろぐ家族

一戸建て住宅の暖房システムとして、セントラルヒーティングがあります。1つの熱源で家全体を暖め、環境にもやさしいと人気の設備です。

この記事では、セントラルヒーティングの仕組みや種類、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。

全館空調との違いや薪ストーブとの組み合わせについてもお伝えしますので、新築の暖房選びに迷っている方は参考にしてみてください。

セントラルヒーティングとは?

セントラルヒーティングのパネルヒーター

セントラルヒーティングとは、建物全体を均一に暖める暖房システムの1つです。建物内の1箇所に熱源を設置し、熱を循環させて全体を暖かく保ちます。24時間稼働させるのが基本で、冷房機能は備わっていません。欧米で発祥し、寒冷地を中心に発展しました。

海外では日本のように部屋ごとに暖める暖房器具よりも、建物全体を1つの熱源で暖めるスタイルが主流です。暖房に対する価値観の違いもあって、日本ではセントラルヒーティングがさほどメジャーではありません。しかし、欧米並みの寒さとなる北海道では需要があり、新築一戸建ての70〜80%が導入しているとされています。

全館空調とは似て非なるもの

一戸建ての暖房システムの中には、セントラルヒーティングと同様に建物全体を暖める設備があります。全館空調もその1つで、新築住宅で人気の暖房設備です。

セントラルヒーティングと全館空調の違いは、「冷房機能」の有無です。セントラルヒーティングには冷房設備がないものの、全館空調には冷房機能が備わっているため夏場も室内を快適に保てます。

どちらを選ぶかは、夏場の気温や環境に応じた判断がおすすめです。

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セントラルヒーティングの仕組みと種類

セントラルヒーティングの床でくつろぐ子ども

セントラルヒーティングを一戸建てに導入するにあたって、仕組みや種類を理解しておくと入居後の後悔が少なく済みます。主な種類には「温水式」と「温風式」があるので、それぞれの特徴についても見てみましょう。

セントラルヒーティングの仕組み

セントラルヒーティングは、1箇所で生成された熱源を各部屋へ送り込む暖房システムです。室内全体を均一に暖められるという特徴があり、各部屋に暖房機器を設置する必要がありません。

セントラルヒーティングは、輻射熱を利用して部屋を暖めます。輻射熱とは、電磁波による熱で、物体の中まで届くというのが特徴です。体感としては、「芯から温まる」という感覚に近くなります。

温水式セントラルヒーティング

温水式は、温水を利用して室内を暖める仕組みです。温水はボイラーで水を温めて生成し、循環パイプを通じて各部屋に設置されているパネルヒーターに届きます。各部屋の温度が均一化されることで、家全体の温度が一定に保てるのです。

温水式は水を媒体として熱を届けるため、熱損失が少ないというメリットがあります。配管には高い気密性が必要となり、導入費用もかかります。それでも、日本では「セントラルヒーティング」と言えば、温水式を指すのが一般的です。

温風式セントラルヒーティング

温風式は、温風を発生させて室内を暖めます。風は大型のファンヒーターに似たスタイルで発生させ、循環パイプを通じて各部屋に届ける仕組みです。熱源は、電気やガス、石油から選べます。

温風式は温水式と比較して熱損失が大きく、大きな建物には不向きです。ただし、風を媒体としているため、配管の気密性は温水式ほ高める必要がありません。

セントラルヒーティングを一戸建てに導入するメリット

パネルヒーターのある洋室

セントラルヒーティングにはさまざまなメリットがあり、一戸建て住宅への導入もおすすめです。マイホームの新築時に採り入れる主なメリットを7つ紹介しましょう。

家全体が均一に暖まる

セントラルヒーティングでは1つの熱源で各部屋を暖めるため、建物全体が均一に暖まります。24時間運転し続けるのが基本で、時間帯にかかわらず快適な室温をキープできるのが魅力です。

部屋ごとに急激な温度変化が起きる心配もなく、冬場のヒートショックへのリスクも軽減します。高齢者や持病がある方も安心して過ごせる家づくりに役立つ暖房システムです。

乾燥や風の影響を受けない

セントラルヒーティングはパネルヒーターからの輻射熱を利用して部屋を暖めるため、風の発生はありません。エアコンやファンヒーターのように、空気中にホコリが舞いにくいのできれいな空気が保てます。

室内の乾燥も最小限にでき、冬場のウイルス対策にも役立つ暖房システムです。アレルギーや喘息をお持ちのお子さんがいるご家庭でも、安心して使えます。

安全性が高い

セントラルヒーティングは燃焼系の暖房器具ではないので、火を使わないという特徴があります。火災や火傷のリスクが低く、石油やガスストーブのような臭いも発生しません。

小さなお子さんや高齢者がいるご家庭でも安心して利用でき、親御さんも過度に心配せずに済みます。ペットも自由に動き回れるので、お仕事で留守の間も部屋を暖めておけて安心です。

二酸化炭素の発生が少ない

セントラルヒーティングの熱源は1つに限られているため、部屋ごとに暖房器具を使うよりも二酸化炭素の排出量を軽減できます。給排気筒がないストーブやファンヒーターのように定期的な換気も必要ないため、外気温が入り込んで室温が下がるという問題もありません。

環境に配慮できるだけでなく、換気の頻度が減ることで暖房効率が上がります。ただし、感染症対策を目的とした換気は不可欠なので注意しましょう。

メンテナンスが簡単で耐久性は高い

セントラルヒーティングの魅力は、メンテナンスの手軽さにあります。通常のお手入れは、パネルヒーターのホコリを取り除く程度で十分です。エアコンのようにこまめにフィルターを掃除する必要もなく、仕事や家事に追われている世帯でも負担が少なく済みます。

製品そのものの耐久性も高く、故障や買換え頻度はさほど多くありません。ほかの暖房器具と比べて、比較的簡単に長持ちさせられるのも魅力です。

インテリアに馴染む

各部屋に取りつけるパネルヒーターは、一度設置したらそのままにしておきます。夏の間も片づける必要がないので、収納スペースは不要です。

インテリアとの相性を心配されるかもしれませんが、デザイン性にすぐれているものが多く展開されています。お部屋の間取りやインテリアに合わせたパネルヒーターを選べば、違和感なく設置可能です。

熱源を変更できる

セントラルヒーティングの熱源は、ガスや石油、電気と選択肢がいくつかあります。設置後に熱源を変更したくなった場合、容易に切り替えられるのが魅力です。

たとえば、エネファームや水素発電と組み合わせれば、光熱費削減にもつながります。セントラルヒーティングは地球にもお財布にもやさしい暖房システムとして、暮らしをサポートしてくれるでしょう。

セントラルヒーティングを一戸建てに導入するデメリット

寒い手を合わせる女性

セントラルヒーティングを採り入れた一戸建て住宅にはさまざまなメリットがある反面、留意しておきたいデメリットも存在します。代表的なデメリットとして、以下の3点を解説しましょう。

初期費用が高い

セントラルヒーティングの導入には、エアコンやストーブと比較して高額な費用が必要となります。主に「熱源」「循環パイプ」「パネルヒーター」の設置に大がかりな工事が必要なためです。一般的に、新築時のほうが施工は簡単で、入居後にリフォームするよりはコストが抑えられます。導入費用はかかるものの、メンテナンス頻度も低く、長期的に考えると経済的な暖房システムです。

光熱費がかかる

セントラルヒーティングは、一度稼働させたら24時間運転し続ける仕様となっています。ほかの暖房器具よりもランニングコストが高く感じるものの、エアコンやストーブのようにこまめにスイッチを入れたり、切ったりしません。電化製品は電源を入れた瞬間が最もエネルギーを消費するとされ、最近ではエアコンをつけっぱなしのほうが経済的という説もあるほどです。また、高気密高断熱住宅を新築すれば、暖房を使う機会も減り、光熱費の高騰を防げます。

暖まるまでの時間が長い

セントラルヒーティングは輻射熱で部屋を暖めるため、室温が上がるまでに時間が必要です。早急に部屋を暖められないものの、冬の間は稼働し続けるのでさほど問題ありません。冷え込みが進む前に電源をオンにすれば、体感的に寒く感じる前に家中を暖められるでしょう。長期間の運転が前提なので、設定温度を低めにセットしても底冷えは防げます。

セントラルヒーティングの効果的な活用法

冬でも暖かい夜のリビング

セントラルヒーティングは、寒冷地の冬を快適に過ごすのに役立つ暖房システムです。そのままでも十分暖かいものの、より効果的に使う方法もあります。一戸建て住宅で上手に活用するための方法を3つ紹介しましょう。

1.基本は24時間運転

セントラルヒーティングを効率的に活用するためには、24時間稼働させ続けるのがおすすめです。温水式の場合、一度下がった水温をボイラーで温め直すには時間とエネルギーを要します。頻繁にスイッチを切り替えるよりも、運転し続けるほうが省エネで経済的です。慣れるまでは「もったいない」と感じるかもしれませんが、仕組みを理解して実践してみましょう。

2.設定温度は低めに

セントラルヒーティングの設定温度は、パネルヒーターで調整可能です。設定温度を低めにしておくと、稼働時に必要なエネルギーが少なく済みます。セントラルヒーティングは家全体の温度を均一に保てるので、部屋の移動時に寒暖差を感じないというのも大きな魅力です。部屋ごとの温度差が生じない分、室温が高くなくても快適に生活できます。ただし、間取りによっては局所的に暖まりにくい場合もあるので、エアコンやヒーターとの併用が必要となるケースもあります。

3.窓際にパネルヒーターを設置

寒い季節にはコールドドラフト現象(窓ガラスからの冷気が暖かい室内に流れ込み、足元が冷える現象)が起こりやすいというのが課題です。セントラルヒーティングによる快適な暖房を妨げる要因の1つなので、窓際にパネルヒーターを設置して対処しましょう。窓際にパネルヒーターを取りつけると、室内の暖かい空気が冷たい窓ガラスに触れずに済み結露がつくのを防げます。

セントラルヒーティングと相性のいい暖房設備

薪ストーブと猫

一戸建て住宅でセントラルヒーティングを導入した場合、薪ストーブとの組み合わせる方法もおすすめします。

薪ストーブは薪を燃やして暖めるので、炎を見ながらリラックスできる暖房設備です。セントラルヒーティング同様、輻射熱による暖かさが心と身体を満たしてくれます。

ただし、薪ストーブには以下のようなデメリットもあるので注意しましょう。

・薪を調達する手間とコストがかかる
・煙や匂いへの対策が必要
・暖まるまで時間がかかる
・火傷の恐れ
・一酸化炭素中毒の危険性

メインの暖房器具としては不向きな面が多く見受けられるものの、セントラルヒーティングの補助的に使う分にはさほど問題ありません。少しでもデメリットを減らしたい場合は、「ペレットストーブ」をおすすめします。

ペレットストーブは、間伐材や木くず、廃材を圧縮した木質ペレットを燃料とするストーブです。「燃料が入手しやすい」「灰や煙が少ない」「着火や温度調整が簡単」というように、薪ストーブのデメリットを解消する特徴があります。

薪ストーブやペレットストーブは、セントラルヒーティングとは熱源が異なるのも重要なポイントです。電気やガスを使わないため、災害時にも運転できます。表面の温度が200〜300℃程の強火で、パネルヒーターと同様に輻射熱で広範囲を暖められるというのが強みです。

暖房設備が1つでは不安に感じる方や、リラックスしながら暖をとりたい方は、薪ストーブの併用を検討してみましょう。

まとめ

セントラルヒーティングを一戸建てに取りつける際は、信頼性できる業者を選ぶ必要があります。設置には複雑な工事が必要なため、豊富な実績と高い技術力が求められるというのが理由です。

セントラルヒーティングのデメリットでもあるランニングコストを抑えるためには、高気密・高断熱住宅を推奨します。省エネ住宅を謳っているハウスメーカーや工務店に相談し、より効果的に導入しましょう。

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