注文住宅はオール電化とガス併用のどちらがおすすめ?メリット・デメリットを徹底比較
注文住宅を建てるにあたって、オール電化にするか、ガス併用にするか迷っていませんか。一度決めると変更が難しいため、選択に慎重になっているケースは珍しくありません。この記事では、オール電化とガス併用について比較したい人向けに、違いやメリット・デメリット、住宅設備を選ぶポイントについて解説します。家づくりにお悩みの方や光熱費削減に興味がある方は最後までお読みください。
オール電化とガス併用の違い
オール電化とガス併用の違いは、異なるエネルギー源を利用する点です。設備にも違いがあり、オール電化住宅では、主に電気をエネルギー源として用います。給湯にはエコキュートを利用し、深夜電力でお湯を作り、タンクに貯めておくのが一般的です。調理にはIHクッキングヒーターを使い、火を使わずに調理できます。
一方、ガス併用はガスと電気を併用します。給湯にはガスボイラーを使用し、瞬時に高温のお湯を供給できるのが特徴です。調理はガスコンロを使い、直火による強力な加熱ができます。暖房にはガスファンヒーターも利用でき、スイッチを入れるとすぐに部屋を暖めることが可能です。
オール電化とガス併用のメリットとデメリット
オール電化とガス併用には、それぞれメリットとデメリットが存在します。洗濯時に何を優先するのかを決めると、選ぶ際の迷いが減るのでおすすめです。以下にメリットとデメリットを紹介しますので、ご自身のライフスタイルや予算、地域の条件に合わせて検討しましょう。
オール電化のメリット
オール電化は光熱費を電力に一本化できるため、基本料金の支払いを1つにまとめられます。2024年は電気やガス料金の高騰が話題となっており、家計への負担を減らすのにも効果的です。電力会社の夜間料金割引を利用して水を沸かすため、日中の電気代も抑えられます。さらに、IHクッキングヒーターを使用することで火災のリスクやガス漏れによる一酸化炭素中毒の心配がいりません。
オール電化のデメリット
オール電化のデメリットは、「昼間の電気代が高くなる」「初期費用が高額」「停電時に不便」の3点が挙げられます。オール電化向けプランは、昼間の電気料金が割高に設定されているためです。エコキュートの導入費用はガスと比較して高額で、工事費用もかかるため予算が多く必要となります。ただし、条件によっては補助金を受けられるケースもあるので、経済産業省の給湯省エネ2024事業【公式】をチェックしてみましょう。また、停電時にはすべての家電が使えなくなるため、生活が不便になります。
ガス併用のメリット
ガス併用住宅のメリットは、ガスコンロはIHクッキングヒーターより火力が強い点にあります。炒飯のような中華料理を美味しく仕上げられ、使用する鍋やフライパンに制限もありません。また、暖房器具もガスを使ったファンヒーターは、エアコンと比べて短時間で部屋を暖められて経済的です。ガス併用の場合、日中の電気代が高いオール電化プランとは異なり、24時間一定の料金で電気を使用できます。初期費用も比較的安く、停電時でもガスを使用できるのが強みです。
ガス併用のデメリット
ガス併用住宅のデメリットは、電気とガスの基本料金がそれぞれ発生する点です。使用量に関係なく毎月基本料金の支払いが続くので、オール電化と比べて追加の出費が多くなります。とくにプロパンガスは料金の規制がないため、契約会社によって金額に幅があるというのも問題です。また、ガスは火災やガス漏れ、一酸化炭素中毒のリスクを伴います。災害時にガス管が破損すると電気や水道と比べて復旧まで時間がかかり、生活が不便になる恐れがあります。
給湯設備をオール電化とガス併用で比較
キッチンやお風呂、洗面所などに加熱した水を供給するための給湯設備は、オール電化とガス併用ではどのような違いがあるのでしょうか。それぞれのメリットとデメリットを紹介します。
オール電化の給湯設備:エコキュート
オール電化の給湯設備はエコキュートを利用し、空気中の熱を圧縮してお湯を作る仕組みです。
メリット
エコキュートのメリットは、光熱費が節約できる点にあります。電気料金の安い深夜電力でお湯を作りタンクに貯めておき、日中使用できるためです。ガス給湯器よりも効率的で、月々の電気代が大幅に安くなります。また、エコキュートは空気熱を利用するためCO2排出量が少なく、環境に優しいのも特徴です。非常時には貯湯タンクの水を利用でき、停電時や断水時でもお湯や水が使えます。国や自治体の補助金制度を利用できる場合もあるので、初期費用が気になる場合も安心です。
デメリット
エコキュートのデメリットとして、貯湯タンクのお湯は飲料として使用できない点があります。しかし、ミネラルウォーターやウォーターサーバーを飲み水として利用しているご家庭も増えているので、さほど問題はないでしょう。水圧が弱いという課題もありますが、高圧給湯機能を備えた機種で対応可能です。お湯切れの心配はほとんどありませんが、沸くまでに時間がかかります。また、貯湯タンクとヒートポンプユニットの設置には広いスペースが必要です。
ガス併用の給湯設備:ガス給湯器
ガス併用の場合は、ガスで水を沸かすシステムのガス給湯器を設置します。プロパンガスや都市ガスと契約し、お湯を家庭内に巡らせるシステムです。排気熱を再利用することでガス使用量とCO2排出量を削減するエコジョーズもガス給湯器に含まれます。
メリット
ガス給湯器は初期費用が安く、エコキュートに比べ20〜30万円程安く設置できます。コンパクトでスペースを取らないため、敷地面積が限られている住宅にもおすすめです。都度水を沸かす瞬間式のため、いつでもお湯を使えます。お湯が新鮮で飲用可能であり、貯湯式のように時間が経って水質が劣化する心配もありません。また、水道管の水圧のまま蛇口からお湯が出る直圧式なので、シャワーの水圧が強いというのも特徴です。
デメリット
ガス給湯器は動作音が大きく、水を沸かす際に「ブーン」という音が発生するというのがデメリットです。本体の寿命も短く、10年程度で交換の必要があります。光熱費も高く、エコキュートと比べてランニングコストは2~3倍ほど割高です。断水時はお湯だけでなく、水も使用できなくなります。長期的な断水に備えて、お湯や水を用意する手段について考えておきましょう。
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キッチンの調理設備をオール電化とガス併用で比較
キッチンで調理するにあたって、オール電化ではIHクッキングヒーター、ガス併用ではガスコンロを使います。それぞれのメリットとデメリットを比較し、ご自身にあったほうを選択しましょう。
オール電化の調理設備:IHクッキングヒーター
IHとは「Induction Heating」の略称で、日本語では「電磁誘導加熱」と訳されます。電気によって磁場を発生させ、調理器具を発熱させるシステムです。
メリット
IHクッキングヒーターのメリットには、高火力でありながら火力調整が容易である点が挙げられます。熱効率が約90%と高く、短時間で加熱ができて便利です。また、火を使わないため火災のリスクが低く、掃除がしやすいという特徴もあります。太陽光発電や蓄電池と連携すれば、電気代の削減も可能です。ガスコンロに比べて安全で使いやすく、小さなお子さんやペットと暮らすご家庭でも安心して使えます。表面が平らで汚れを落としやすい点は家事の時短にもつながるので、仕事や育児に忙しい人にもおすすめです。
デメリット
IHクッキングヒーターのデメリットには、直火を必要とする調理に不向きな点があります。IHクッキングヒーターは火を出さないため、直火調理をする機会には不便です。また、IH対応の調理器具が必要で、土鍋やガラス製の鍋は使用できません。電気代高騰の影響も受けやすく、2022年にはロシアによるウクライナ侵攻が電気代上昇のきっかけとなりました。ただし、ガス代も同様に高騰したため、ガスコンロ利用者も影響を受けています。電気代を確実に削減するためには、太陽光発電や蓄電池の導入がおすすめです。
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ガス併用の調理設備:ガスコンロ
ガス併用住宅では、キッチンでの調理はガスコンロも選択肢に入ります。IHとの違いやメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
ガスコンロのメリットは、炎が目に見えるため火力がわかりやすく、直感的に火加減を調整できる点にあります。温度調節機能が付いている製品も多く、揚げ物なども簡単に調理可能です。土鍋や中華鍋をはじめ、使用できる調理器具の種類が多く、炙りや鍋振りもできます。各コンロを同時に高火力で使えるため、一度に多くの料理を効率的に作れて便利です。さらに、ガスを使用するため停電時でも調理が可能で、災害時もプロパンガスは早めに復旧します。
デメリット
ガスコンロは凹凸やパーツが多く、IHに比べて掃除が大変というのがデメリットです。ただし、取り外しやすい五徳や洗いやすい素材を使った機種も増え、掃除の手間も省けるようになっています。火の消し忘れや燃え移りによる火災のリスクもありますが、近年のガスコンロは多くの安全機能を備えているので安心です。ガスコンロは周辺に熱がこもりやすいため、夏場はキッチンが暑くなりやすいのも課題となっています。
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暖房設備をオール電化とガス併用で比較
暖房設備の選び方も、オール電化とガス併用では異なります。冬の寒さは地域によるだけでなく、住宅自体の断熱性や気密性も重要なポイントです。室温を快適に保てる環境を整えた上で、どちらが適しているか判断することをおすすめします。
オール電化の暖房設備:エアコン
オール電化住宅の場合、暖房設備はエアコンが主流です。エアコンのメリットとデメリットを見てみましょう。
メリット
エアコンのメリットは部屋全体の温度を効率良く調整し、温度ムラが生じにくい点です。外気に影響されずに安定した温度を保てるため、1年を通して快適です。安全性の高さから、ペットが留守番しているご家庭でも人気があります。また、エアコンはストーブやファンヒーターと違い、ケガや火傷のリスクが少ないのも魅力です。小さなお子さんが遊ぶスペースでも安心して使えるので、リビングや子ども部屋にもおすすめします。
デメリット
エアコン暖房は空気を乾燥させるため、肌の乾燥やウイルスが蔓延する原因です。運転時にはホコリが舞いやすく、フィルターが汚れると悪臭も発生します。運転時は加湿器を併用したり、定期的に掃除をしたりしなければなりません。また、エアコンは部屋の上部に設置されるため、足元が暖まりにくいというのも課題です。ただし、注文住宅の断熱性や気密性を高めれば、サーキュレーターを使って空気を循環させるだけで部屋全体が暖まります。
ガス併用の暖房設備:ガスファンヒーター
ガス併用住宅では、エアコンの他にガスファンヒーターの選択肢もあります。メリットとデメリットがあるものの、高気密・高断熱住宅であればエアコン1台でまかなえるケースがほとんどです。
メリット
ガスファンヒーターは、スイッチを入れてから約5秒で強い温風が出るため、冬場の冷えた室内も素早く暖められます。ガス栓につなぐだけで使える手軽さと、ランニングコストが比較的安いことも人気の理由です。定期的なメンテナンスを行えば長期間使用でき、コストパフォーマンスも優れています。また、燃焼時に水分が発生するため、部屋が乾燥しにくいのも魅力です。
デメリット
ガスファンヒーターを使用するには部屋にガス栓が必要なので、注文住宅を設計する段階で使う部屋を決めておく必要があります。使用時には1時間に1~2回程度の換気が欠かせず、一度暖まった部屋に外気が入り込んでしまうのも課題です。ガスファンヒーターは吹き出す温風が高温のため、当たり続けると火傷の恐れがあります。小さなお子さんやペットのいるご家庭では、柵で囲うなどの安全対策が不可欠です。
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まとめ
オール電化とガス併用のどちらが良いかは、ライフスタイルや予算によって異なります。たとえば、オール電化は日中家を空ける時間が長い方にとって経済的ですし、ガス併用は料理の火加減にこだわりたい方におすすめです。どちらにもメリットとデメリットがあるため、光熱費のシミュレーションや住宅性能との相性はお近くの工務店に相談してみましょう。