光熱費の基本を学んで高騰に負けない対策を!節約ポイントと新築住宅の省エネ設備
新築住宅を考えるときに注意したいのが、引っ越し後の光熱費です。水道や電気、ガスは生活に必要不可欠なものの、2023年現在、電気代を含む光熱費の高騰が話題となっています。
この記事では、光熱費の仕組みや値上がりの原因、政府の支援策について説明します。注文住宅を考えている方向けに、省エネ設備や光熱費の節約ポイントも紹介しますので、家づくりの参考にお読みください。
光熱費とは?料金の仕組みについて
光熱費とは、主に電気、ガス、水道代を含む生活に欠かせない費用の1つです。光熱費は毎月かかる費用であり、家計管理の中では「固定費」として扱われるのが一般的です。電気、ガス、水道代の仕組みについて説明します。
電気代
毎月の電気料金は、「基本料金」「電力量料金(従量料金)」「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の合計額で計算されます。基本料金は、電気を使用しなくても支払わなければなりません。
電力量料金には、使用した電力量だけでなく、石炭や原油などの燃料の価格も含まれています。市場や為替の変動にも影響されるため、電気料金は社会情勢に大きく左右される特徴があります。
ガス代
ガス代は、契約内容によって決まる「基本料金」と、使用した量に応じて計算される「単位料金×ガス使用量(従量料金)」を合計した金額です。単位料金は、液化天然ガスや液化石油ガスの価格から計算されています。毎月変動する場合もあるため、注意が必要です。電気代と同様に、基本料金はガスを使用しなくても支払わなければなりません。
ガスには都市ガスとプロパンガスの2種類があります。地域や物件によって使える種類は異なるのが特徴です。一般的に都市ガスは単位料金が低く、人気があります。
水道代
水道は、市町村などの自治体が管理しているというのが特徴です。料金設定や支払い方法は、居住地によって異なります。たとえば、兵庫県では、「基本料金」と「従量料金」(使用した水の量に応じた料金)を合算した金額です。水道料金は使用量に応じて金額が決まる点で、電気やガスと共通しています。
基本料金や従量料金は、新築住宅を建てる地域の水道局で確認可能です。支払いに関しては、2か月分をまとめて請求されるシステムが多くなっています。
4人家族の光熱費の平均額は?
総務省統計局によると、2022年は全世帯の水道光熱費の月平均額は20,398円でした。総世帯平均額は、単身世帯を含んだ全世帯の統計値であり、世帯人数が増えるほど平均額も上昇します。
(出典:総務省統計局「家計調査(家計収支編)2022年 年間収入五分位・十分位階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出」)
一般的な4人家族の光熱費の平均額と内訳は以下の通りです。
4人世帯(有業者1人)年間収入階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出
内訳 | 金額 |
電気代 | 13,016円 |
ガス代 | 5,175円 |
上下水道料 | 5,585円 |
他の光熱 | 520円 |
合計 | 24,296円 |
(出典:総務省統計局「家計調査(家計収支編)2022年 調査結果4人世帯(有業者1人)-年間収入階級別」)
合計平均額は24,296円であり、4人家族の光熱費は総世帯平均よりも月に約4,000円高くなるとわかります。
光熱費の上昇は人数の増加によるものだけでなく、生活スタイルにも関係します。たとえば、起床や就寝時間の違い、食事の準備をする回数、お風呂の沸かし直しの頻度なども要因です。また、住居が広くなると照明や空調などの使用量も増えるため、光熱費が高騰します。
電気代高騰の理由と原因
光熱費の一環である電気代は、市場や為替の影響を受けるため、社会情勢によって料金が変動しやすいとお伝えしました。2022年には電気代が上昇し、毎月の明細に驚かれた方も多いことでしょう。電気代の高騰は止まらず、2023年も上昇する見込みです。
2021年から電気代は高騰
2022年には、多くのメディアが電気代の値上げを報じました。具体的には、いつから電気料金が上昇し始めたのでしょうか。東京電力のホームページに掲載されている「平均モデルの電気料金」のグラフから、推移を確認できます。
(引用:東京電力「平均モデルの電気料金」)
グラフを見ると、電気代の値上げは急激に発生したわけではなく、2021年から高騰が続いているとわかります。
具体的な金額の推移を見てみましょう。
2021年3月 | 6,317円 |
2022年3月 | 8,244円 |
2021年から1年の間で、約2,000円も高騰しています。多くの家庭でガス代や水道代の値上がりと重なり、家計にとって大変な状況となりました。住宅購入を検討している方にとって、電気代の高騰は心配材料の1つとなっています。
電気代の高騰を引き起こす3つの要因
電気代の高騰には、いくつかの要因が関与しています。1つだけでなく、2つの要因が絡まったり複雑です。社会情勢に大きく左右される仕組みと原因について3つ解説しましょう。
天然ガス(LNG)と石炭の価格の上昇
日本では、火力発電に必要な多くの化石燃料を輸入しなければなりません。燃料の輸入は世界情勢に左右されるため、電力会社の負担を軽減する「燃料費調整額」が電気料金に適用されています。天然ガスや石油などの化石燃料の価格は、ロシアのウクライナ侵攻などの影響で高騰が続いています。その結果、燃料費調整額も増加し、電気代の上昇が止まらない状態です。
2023年に入り、化石燃料の高騰はやや収束してきたものの、今後の価格変動を注視する必要があります。
国内の電力供給不足
東日本大震災の影響により、多くの原子力発電所が停止しました。震災後も長期間にわたって稼働が停止したため、国内では火力発電に頼る状況となっています。福島原発事故の廃炉費用や賠償費用が2020年から電気料金に上乗せされているのも、高騰の要因です。
電力不足の中で、異常気象が重なりエアコンや冷暖房機器の需要が高まっています。燃料価格の上昇により、火力発電による電力生産には高いコストが必要です。国内の電力不足が電気料金の高騰を加速させている状況でもあります。
再生可能エネルギー発電促進賦課金の価格変動
現在、世界中で環境にやさしい「脱炭素化」が進行しています。日本も「2050カーボンニュートラル宣言」という取り組みを行っており、例外ではありません。将来的には再生可能エネルギーの普及が期待されています。再生可能エネルギーは、地球温暖化抑制のために非常に重要な存在です。
再生可能エネルギーシステムの整備にはコストがかかり、「再エネ賦課金」として国民が負担しています。電気料金に反映されるため、再エネ賦課金の上昇に合わせて電気代が高騰する可能性も視野に入れておかなくてはなりません。
電気・ガス価格激変緩和対策事業がスタート
政府は「電気・ガス価格激変緩和対策事業」として、2023年1月から電気・ガス料金の補助を行うと決定しました。3兆円以上を使った補正予算の一部であり、国が電力会社や都市ガス会社に補助金を提供します。利用者への請求額を値引きして負担を減らすのが目的です。
ほとんどの家庭で値引きを受けられますが、特別高圧の電力契約や年間1,000万㎥以上のガス契約は対象外となっています。詳細は各電力会社や都市ガス会社に問い合わせましょう。
電気・ガス価格激変緩和対策事業の割引を受けるにあたって、利用者側での手続きは不要です。電力会社や都市ガス会社が国に申請し、値引きを実施します。利用している事業者が支援の採択を受けているかは、経済産業省資源エネルギー庁の「値引きを行う事業者の一覧」で確認可能です。
(参考:経済産業省「電気・ガス料金の値引きを行うことができる特例認可を行いました」)
家庭が受けられる値引き金額や確認方法
「電気・ガス価格激変緩和対策事業」による補助金額は、電気とガスでは異なります。
電気や都市ガス料金には使用量に応じて決まる単価があり、単価から契約に基づいて計算した金額を差し引いた金額が適用されます。
適用期間 | 電気(低圧) | 電気(高圧) | 都市ガス |
令和5年1月使用分(2月検針分)から令和5年8月使用分(9月検針分) | 7.0円 | 3.5円 | 30円 |
令和5年9月使用分(10月検針分) | 3.5円 | 1.8円 | 15円 |
(引用:経済産業省「電気・ガス料金の値引きを行うことができる特例認可を行いました」)
具体的な値引き額は、2023年1月の使用分(2月の請求分)以降の請求書や検針票、ウェブの明細などで確認可能です。ただし、値引き額については、電力会社や都市ガス会社が料金の算定に使用する単価であり、実際の値引き額とは異なる場合があります。2023年9月の使用分からは補助金額が半減されるため、注意が必要です。
今すぐできる!光熱費節約のポイント
電気代をはじめ、光熱費の高騰は家計にダメージを与えます。生活に欠かせない経費でもあるため、少しでも負担を減らす工夫が重要です。日常生活でできる節約方法を紹介します。
水道代の節約ポイント
- 水道やシャワーはこまめに止める
- 洗濯物はまとめて洗う
- トイレの洗浄水量を適切に調整
ガス代の節約ポイント
- お風呂は沸いたらすぐに入って、追い炊き機能の使用頻度を減らす
- ガスコンロはこまめに掃除
- 電子レンジや電気ケトルを活用
電気代の節約ポイント
- 電気やテレビを使用しないときは消す
- 省エネの最新家電に切り替える
- エアコンのフィルターや室外機を掃除
- 暖房よりも電気毛布を使う
上記のほかにも、光熱費を節約する方法は多くあります。あまりシビアに節約しようと意識しても苦しくなってしまうので、無理のない範囲で行うのが大切です。節約を心がけることは、環境に配慮することでもあります。エコ活動の一環として、水や電気、ガスの使い方を見直してみましょう。
新築住宅におすすめの省エネ設備
光熱費を節約するために考えたいのは、エネルギーを無駄にしない省エネ生活です。現在、住宅購入を検討している方には、省エネ設備の導入をおすすめします。省エネシステムをあらかじめ導入することで、節約にもつながる生活が実現できるためです。以下では、代表的な3つの省エネ設備を紹介します。
節湯(せつゆ)水栓
節湯水栓とは、お湯の使用量を少なくするための工夫がされた水栓です。通常の水栓では、レバーハンドルを中央の位置に合わせると少しずつお湯が出てきます。知らないうちにお湯が出ていて、無駄になっているケースも多いのが問題です。
節湯水栓では、レバーハンドルを少し左にずらさないとお湯が出ないようにしたり、お湯が出始めるとカチッと音がするように設計されています。うっかりお湯を使ってしまうことがなくなり、給湯にかかる光熱費を節約できる設備です。
太陽光発電
太陽光発電は、太陽の光エネルギーを使って直接電気を作るシステムです。太陽光エネルギーは無限に使えるため、石油や石炭などの化石燃料に比べてエコで持続可能なエネルギーです。
最近では、太陽光発電システムを導入する新築住宅が増えています。家庭用の太陽光発電は、電力会社につながっているのが特徴です。雨や曇り、夜間など発電量が足りない時には電力会社から電気を買えます。発電した電気が使う量を超えている場合には、電力会社に売って収入を得ることもできる仕組みです。
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HEMS(ヘムス)
HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)は、家庭で使う電気やガスの利用状況を管理するシステムです。家電や電気設備をつなげて利用状況を確認できるだけでなく、家電の自動制御もできます。
HEMSを導入すると、エネルギーの消費量を最適化しやすくなります。省エネ生活を手軽に実現させたい方におすすめです。
まとめ
光熱費は、地域や社会情勢によって変動します。急に高騰する可能性もあるので、新築住宅購入の際は、省エネできる仕組みを考えておくと安心です。日常生活でこまめに節約するよりも、省エネ設備を導入したほうが簡単に光熱費を削減できます。
省エネ設備の導入を検討して、地球にもお財布にもやさしい暮らしを目指しましょう。